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ニュース

2015
* 王恵仁氏が第9回日本物理学会若手奨励賞を受賞しました。 グランドライデンで行った高エネルギー(198,295,392MeV)での16O(p,d)反応により酸素原子核内のテンソル力の重要性を示した研究で、 Phys.Lett.B725,277(2013)に発表されました。
* 不安定核インプラント標的実験を目指すBRILLIANTプロジェクトの一環で、バンデグラフ施設において、重陽子を1mmφ領域にインプラントした標的を用いてd(d,p)t反応を測定することに成功しました。
* 国内外のコンプトン抑止器付クローバー型Ge検出器を組み合わせたアレイCAGRAを構築し、安定核/不安定核ビームを用いた国際共同研究プロジェクトが進行中です。日米(東北大、ANL、LBNL)の他中国、韓国も加わり、国際協力の輪が広がりつつあります。RCNPサイクロトロン施設のENビームラインを用いたCAGRAキャンペーン実験が2月末から始まる予定です。
* 西実験室に建設した新しいDCミューオンビームラインでのビームチューニングとμSR測定・ミューオンX線測定の準備を進めています。これらの物理実験を平成27年度中に開始する計画です。2015年2月のビーム試験ではミューオンX線の試験的な測定に成功しました。
2014
* グランドライデン前方モードビームライン(GRAF)が3月に完成しました。4.5度〜19度の前方散乱の低バックグラウンド測定が可能になります。7月にビーム輸送のコミッショニングを行った後、13C(p,d)反応を測定する最初の物理実験を行いました。
* 西実験室に新しくDCミューオンビームラインを整備しました。平成27年度よりユーザー供給を開始する計画です。
* 日米の国際協力によりクローバー型Ge検出器アレイCAGRAを構築し、安定核/不安定核ビームを用いた国際共同実験で核構造研究を推進するCAGRAプロジェクトが進行中です。本年度中に実験開始予定です。
* トラッキング型ゲルマニウム検出器の開発が進行中です。本年度中に1モジュールが完成する予定です。
* グランドライデンスペクトロメータでf殻核のガモフ・テラー強度の系統的測定を行った結果、中性子陽子間の残留相互作用の性質が、殻内におけるフェルミ面の位置に応じて荷電ベクトル型の斥力相互作用から荷電スカラー型の引力相互作用に変化していくことを初めてつきとめました。Y. Fujita et al., PRL112,112502(2014)参照。
* 日米の国際協力により国内外のコンプトン抑止器付きクローバー型Ge検出器を組み合わせたアレイCAGRAを構築し、安定核/不安定核ビームを用いた国際共同実験で核構造研究を推進する計画が進行中です。
* 2013年度補正予算により、トラッキング型ゲルマニウム検出器の開発に着手しました。
2013
* 不安定核ビームライン(ENコース)に四重極電磁石を増設し、第3焦点面まで延長する工事を実施しています。年度内に完成予定です。
2012
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  • 三木謙二郎氏(学位取得時東京大学、現在RCNP)、松原礼明氏(学位取得時RCNP、現在理研)、堂園昌伯氏(学位取得時九州大学、現在理研)の三名が第18回原子核談話会新人賞を受賞しました。松原氏と堂園氏の受賞課題はグランドライデンを使用した研究をまとめたものです。
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  • 三木氏謙二郎が RIBF Users Group Thesis Awardを受賞しました。300MeV/uでの(t, 3He)反応によりβ+型荷電ベクトルスピン単極共鳴状態を初めて同定したことが認められたもので、その成果はPhys. Rev. Lett. 108, 262503 (2012) に掲載されました。
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  • 甲南大学の岩本ちひろ氏、RCNPの民井淳氏らによる (p,p')実験により、中性子閾値付近のE1強度集中(ピグミー双極共鳴)を観測し、M1強度と分離してその強度分布を決めました。結果は、Phys. Rev. Lett. 108, 262501 (2012)に掲載されました。
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  • KEKの増田康博氏らによるUCN源開発についての成果がPhys. Rev. Lett. 108, 134801 (2012)に掲載されました。
 

最近の成果

 

酸素-16原子核中のテンソル力

原子核内の陽子・中性子間に働くテンソル力は重水素及びアルファ粒子の束縛エネルギーに大きく寄与する等、原子核において重要な役割を担っていることが知られています。にもかかわらず、原子核におけるテンソル力の効果はアルファ粒子までの軽い原子核を除いて、実験による直接的な証拠が報告されていません。我々はテンソル力による軽い原子核の核構造への寄与を調べるために、大阪大学核物理研究センターにて16O(p,d)反応実験を行いました。実験の結果、16Oの基底状態においてsd-軌道を占有すると考えられる高運動量中性子が予想以上に存在することが明らかになりました。我々は高運動量成分を含むようなガウス基底関数を用いた単純な計算から、本実験の結果がテンソル力効果による可能性があると結論付けました。

Referrence

[1] H. J. Ong, I. Tanihata, A. Tamii et al., Phys. Lett. B725, 277 (2013).

Fig.: テンソル力により16Oの基底状態に混合する2粒子2空孔状態。

 

鉛-208原子核の電気双極子応答の完全測定

陽子非弾性散乱の超前方測定により、208Pbの電気双極(E1)応答を精密に決定した。得られたE1遷移強度分布はピグミー双極共鳴の研究にとって重要であるほか、和則値を引き出す目的で使用することができる。特に励起エネルギーの逆数を重みとする和則値である双極分極率は、中性子スキンの厚さや状態方程式の対称エネルギーの密度依存性と強い相関をもつ量として注目されており、中性子星の性質や超新星爆発過程、元素合成過程などの決定に重大な意義を持つ。

 

図:PDF、GDR、Spin-M1励起の分離.

図:鉛-208の陽子非弾性散乱断面積(上)とスピン反転確率(下)。

Referrence

[1] A.Tamii et al., Phys. Rev. Lett. 107, 062502(2011).

[2] C. Iwamoto et al., PRL 108, 262501 (2012).

[3] I. Poltoratska et al., PRC 85, 41304(R) (2012).

 

ガモフ・テラー強度とダブルβ崩壊行列要素

136Xe [1], 71Ge [2], 76Ge [3], 128,130Te [4], 100Mo [5] and 96Zr [6]原子核のガモフ・テラー強度分布を荷電交換反応(3He,t)で 高分解能測定を行いました。原子核のダブルβ崩壊やニュートリノ検出器の応答を理解するために重要なデータです。

Referrence

[1] P. Puppe et al., PRC 84, 051305(R) (2011).

[2] D. Frekers et al., PLB 706, 134 (2011).

[3] J.H. Thies et al., PRC 86, 014304 (2012).

[4] P. Puppe et al., PRC 86, 044603 (2012).

[5] J.H. Thies et al., PRC 86, 044603 (2012).

[6] J.H. Thies et al., PRC 86, 054323 (2012).


 

 

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