偏極HD標的を用いた実験のプロジェクトは、2005年4月に始まり5年計画で
       進行しています。このプロジェクトの1番の目的は、φ中間子の光生成反応
       の偏極測定量を測定することにより、陽子や中性子の隠れた構造である
       sクォーク-反sクォーク成分を探ることです。また、光生成反応の偏極測定量を
       測定することにより、θ+粒子のスピン−パリティを決定するための重要な
       情報を得る事ができます。

   
 
       実験は大阪大学核物理研究センターから約120km離れたSPring-8にある
       BL33LEPビームラインで行います。紫外レーザーと8GeVエネルギーの電子
       とを逆コンプトン散乱させることにより、1.5−2.4GeVエネルギーの円偏光、
       直線偏光のフォトンビームを発生させる事ができます。
       私達は、主にγp→φp反応やγn→φn反応を観測します。

    

      HD分子は偏極させることが可能であり面白い特性を持っています。スピン1/2を
      持つ陽子とスピン1を持つ重陽子は独立して偏極させることができ、逆方向に偏極
      させることも可能です。陽子や重陽子を高偏極させるために、私達は10mKの
      極低温と17 Tesla の高磁場での”ブルートフォース”を用いた静的偏極法を
      使用しています。約2ヶ月の偏極過程の後、陽子の偏極度は90%以上に達する。
      その陽子の偏極をいわゆる”Adiabatic fast passage”を用いて重陽子に
      移すことにより、偏極持続時間は約1年にまで伸びる。
      HD標的は、核物理研究センターにおいて偏極させた後、トラックを使ってSPring-8
      まで運ばれる。全ての過程において、標的の偏極を保持するために300 Gauss
      以上の磁場を供給し続ける必要がある。

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