**研究内容 − クォークから原子核・原子へ、原子から宇宙へ [#f095b4ad]

宇宙を構成する基本的な粒子はクォークです。クォークが集まって陽子や中性子を作り、そしてそれらが集まって原子核となります。そこは日常では経験し得ない、強い相互作用に支配されたサブアトミックの世界。まだ我々が理解し得ていない謎が数多く残されています。
核物理研究センター理論部では、サブアトミック(素粒子・原子核)世界の基礎から応用まで、幅広い研究を多岐にわたって行なっています。

**[[ハドロン物理学]] [#i6c25a73]
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|#ref(figures/mesic_nuclei.jpg)|[[ホログラフィックQCD>研究内容#nawa_r]]|
|~|[[Hadronic Systems>研究内容#kanchan_r]]|
|~|[[The Research about infinite nuclear matter>研究内容#hu_r]]|
|~|[[ミクロとマクロで繋がる原子核物理学と天体物理>研究内容#uechi_r]]|
|~|[[エキゾチックハドロンを探索し隊>研究内容#yamaguchi_r]]|
|~|[[レーザーで新しい物理を照らす>メンバー#shibata_r]]|

**[[原子核物理学]] [#a2202fa5]
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//|#ref(figures/pion.gif)|[[緒方一介>研究内容#ogata_r]]|
|#ref(figures/pion.gif)|[[赤色巨星が消える!?>研究内容#ogata_r]]|

**[[医学物理学]] [#mdad4767]
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|#ref(figures/yz-show_proton.gif,,50%)|[[素粒子・原子核物理学から探る放射線の生物体への影響>研究内容#horaguchi_r]]|


**赤色巨星が消える!? [[緒方一介>メンバー#ogata]][#ogata_r]

生命の素材である炭素12(正確にはその原子核)が、宇宙の歴史の中でどのようにして生まれたのかは、我々人類にとって極めて重要な研究課題です。炭素12は、3つのヘリウム原子核から作られますが、これまで、その生成は近似的にしか記述されていませんでした。我々はごく最近、恒星内で自由に飛び回る3つのヘリウム原子核の運動を純量子力学的に記述することに成功しました。この計算の革新的なところは、3つのヘリウム原子核が同時に衝突して一気に炭素12を形成するという、これまで起きないとされていた反応の寄与も同時に見積もったことです。その結果、太陽の中心温度では、炭素12の生成量がこれまで知られていた値の1兆倍の10億倍にもなることがわかりました。この変化により、恒星進化のモデルが破綻し、夜空に輝く赤色巨星(アンタレスなど)の存在が理論的に説明できなくなることが報告されています。恒星進化の理解の抜本的な見直しが期待されます。

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**ホログラフィックQCD [[名和要武>メンバー#nawa]][#nawa_r]

実験的に観測可能な粒子であるメソン(中間子)やバリオン(重粒子)などの「ハドロン」は、 色荷を帯びたクォークとグルーオンの複合粒子である。量子色力学(Quantum Chromodynamics : QCD)は、 これらクォークとグルーオンが従う「強い相互作用」を記述し、高エネルギー領域で「漸近的自由性」、 低エネルギー領域で「閉じ込め」を示す非可換ゲージ理論として、1960年代以降、 素粒子物理学の中心的課題として精力的な研究が進められてきた。 さらに、有限温度・密度化された 「QCD物性物理」は、世界的に行われている様々な重イオン衝突実験や、高密度天体観測などの 大型実験プロジェクトと相補的に、物質と時空の起源を理論的に明らかにする発展的フロンティアとして、 近年大きな注目を集めている。 以上の様な状況のもと、1997年にマルダセナ(J.M.Maldacena,プリンストン高等研究所教授) によって発見された「ゲージ/重力対応」はゲージ理論としてのQCDの多彩な非摂動的性質を、 超弦理論の摂動計算で解析可能にしているという点で、 非摂動領域への全く新しいアプローチとして非常に注目を集めてきた<。 特に、超弦理論を基盤としているため、不定パラメータの曖昧さが極めて少ないことも、この模型の大きな魅力である。 さらに、QCD物性の複雑な有限温度・密度効果は、双対な古典重力時空の幾何学的配位で 代表されるため、全く新しい直観的で簡明な「QCD相転移のシナリオ」を提供している。 「ゲージ/重力対応」の応用は、QCDのようなハドロン物理学に留まらず、 天体核物理学や、強相関電子系、中重核の原子核物理など、極めて多岐に渡る。 私は、これらの諸分野の対応を契機とする分野横断研究の創発に努めており、 特にゲージ/重力対応におけるハドロン物性研究を精力的に進めている。

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**Hadronic Systems [[Kanchan Kamchandani>メンバー#kanchan]][#kanchan_r]

Until 1960s, all matter was believed to constitute three elementary particles: an electron, proton and neutron. Bound systems of these three particles formed various atoms, like Hydrogen, Lithium, Beryllium etc. These elements were organized in a periodic table on the bases of their regular properties. Further, as we know, these elements form more complex systems called as molecules like Eg: 2H + O-->H2O, C + 20--> C02, etc., in terms of which it has been possible to understand most of the phenomena ocurring around us. The simple picture of the existence of three elementary particles changed during 1964-1969 when the sub-structure of the proton and neutrons was discovered and it was found that these latter particles were the lightest of many other hadrons. Now, what are hadrons? They are particles which are composed of what we today know as the elementary particles; the quarks. The standard model includes 6 flavors of quarks, each of which possesses three types of "color" charge. These quarks always form colorless hadrons: mesons which are made of a quark and an antiquark or baryons which are made of three quarks. The lightest hadrons are called as the ground state hadrons (for example, proton, neutron, pion, etc.) while those with one or more quarks excited to higher energies or angular momenta are known as excited hadrons or resonances. There exist many hadrons, whose properties cannot be explained in terms of neither of these structures. However, some of them can be understood as weekly bound systems of hadrons. Such hadrons are called dynamically generated resonances since the origin of their existence is the strong (and attractive) interaction between two (or more) hadrons (see the figure below). There are more complex structures of hadrons allowed within the theory of strong interactions, like, tetraquarks, pentaquarks, glueballs, quark-qluon hybrids, etc. Many known hadrons can be understood in terms one of these structures or in terms of a mixed configuration of different structures. My research work involves studies of the properties of different hadrons and their interactions.

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**素粒子・原子核物理学から探る放射線の生物体への影響 [[洞口拓磨>メンバー#nhoraguchi]][#horaguchi_r]
我が国の死因のトップは癌であり、世界的に見ても癌は常に死因の上位にランク
され続けています。今後もその死者数の増加が予想される癌の克服を目指すことは、
人類のとっての最優先課題と言っても過言ではありません。
本研究の目的は、陽子線・炭素線を初めとする放射線による癌治療効果を、量子
色力学及び量子電磁気学的手法を用いて素粒子・原子核のレベルから理解すること
にあります。生体分子との化学的反応過程まで含めた首尾一貫した描像を構築する
ことで、癌治療以外の放射線を利用した治療・診断及び放射線防護に対しても、
基礎物理に基づく指針を与えることが期待されます。


**The Research about infinite nuclear matter [[Jinnu Hu>メンバー#hu]][#hu_r]

Nuclear matter is a hypothetical system of a huge number of protons and neutrons interacting by only nuclear force.
The volume and number of nucleon are infinite, but the ratio is finite in this system.
There are two substances which can be approximately considered as the likelihood candidates of nuclear matter.
One is the neutron star in universe and the other one is the interior of the heavy nucleus around us.
Through the study on infinite nuclear matter, the one of the largest object, neutron star, can be connected with the smallest one, nucleus.
The nuclear force as one of the four fundamental forces in nature still has many puzzles.
It provides a chance to interpret clearly about such force from the study of nuclear matter.
Therefore, we study the properties of nuclear matter with nucleon-nucleon interaction in the many-body framework, such as Hartree-Fock approximation to study the characters of nuclear forces.
These characters include the tensor components, the strong repulsion at short distance and so on.
Furthermore, we also try to use these properties to explain the astronomical observables about neutron star.

**ミクロとマクロで繋がる原子核物理学と天体物理 [[上地舜>メンバー#uechi]] [#uechi_r]

本研究では核物質を記述する強力なモデルである相対論的量子力学を用いたsigma-omegaモデルを基礎とし核力の理論的構造を議論している。 そして、このモデルから得られる状態方程式を通して高エネルギー天体の中性子星を生成し、低密度と高密度、ミクロとマクロな物理を互いに繋いでいる。 中性子星は高密度、高エネルギーの天体であり、星内部にはハイペロン相やクォーク相などエキゾチックな物理があると考えられている。 この星は微視的な有限核系と巨視的な無限物質系を互いに接続する物質として注目されている。 また、中性子星は非常に高密度な天体なので実験が難しい高密度、高エネルギー領域の物理に対して強い力(核力)の構造やクォークの分析が可能と期待されている。 本研究は核物理のみならず天体物理、素粒子、ひいては一般相対性理論、重力波など多岐に渡る物理を横断、互いを融合し、理論的にも実験的にも非常に示唆に富んだ分野である。

#ref(figures/clab.jpg,,15%)
&size(10){中性子星と考えられている、かに座星雲のパルサー};

**エキゾチックハドロンを探索し隊 [[山口康宏>メンバー#yamaguchi]][#yamaguti_r]

エキゾチックハドロンというものをご存知だろうか?これは通常のハドロン、すなわち3クォーク(バリオンと呼ばれる)やクォーク-反クォーク対(メソン)の描象では説明することができない「エキゾチック=風変わり」な構造を持っている。この「何だか普通と違う」という響きに魅了され盛んに研究されてきたのだが...困ったことになかなか実験で見つからない。こうして悶々とした毎日を送っていた我々の前に救世主が現れる。それがヘビーメソンであった。 ヘビーメソンはその名の通り大きな質量を持ち、それによってスピン0のメソンとスピン1のメソンが縮退するという特徴が現れる。この縮退が系に大きな引力をもたらすというのが最近の研究で明らかになっている。
もしこの引力によってヘビーメソンと他のハドロンが束縛状態を形成したら、それは新たなエキゾチックハドロンとして存在する可能性がある!Let's 予言!詳しくは当研究室で!

#ref(figures/EHexplorer.png,,30%)

**レーザーで新しい物理を照らす [[柴田卓也>メンバー#shibata]] [#shibata_r]

量子力学は少数の粒子が存在する系についてはその性質を完璧に予言しますが、多数の粒子が存在する系(多体系)については一般的にその適用が困難になります。 しかしいくつかの多体系については厳密な計算を行うことが可能で、私はその一つであるレーザーが存在する系に興味を持っています。 レーザーは同波長、同位相の多数の光子が存在する系として捉えることができ、その内部で起きる反応についてはあまりに多くの粒子が関与するため、 単純に量子力学を用いて物理量を計算することはできません。しかし相対論的量子力学における強電場中の粒子についての運動方程式の解析解を用いることで、 レーザー中における反応を単純な散乱過程の重ね合わせとして表現することが可能となります。つまり多体系における物理量を厳密に計算することが可能となるのです。 現在は主にレーザーに光子を入射したときの粒子の生成過程を対象に研究を行っています。

#ref(figures/web_shibata.png,,50%)

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