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九州大学大学院理学研究院
  粒子系物理学講座
理化学研究所仁科加速器研究センター
  超重元素研究グループ

森田 浩介

Kosuke Morita

主な経歴

1984年3月

九州大学理学研究院博士後期課程満期退学

1984年10月

政府関係特殊法人理化学研究所入所
研究員補

その後理研の組織改編に伴い所属は変わるも一貫して加速器関連研究室に所属し、研究員、専任研究員となる

1995年

学位取得 九州大学 博士(理学)

2006年

独立行政法人理化学研究所仁科加速器研究センター森田超重元素研究室を准主任研究員として主宰

2013年4月

九州大学大学院理学研究院 教授
理研仁科センター超重元素研究グループ、グループディレクター(非常勤)を兼務

 

超重元素の合成とその崩壊の研究

113番元素を世界に先駆けて合成

 重イオン融合反応を用いて天然には存在しない大きな原子番号を持つ元素の原子核を合成し、その分光学的性質を調べています。化学的には原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムまではアクチノイドというグループに属しますが、原子番号が104を超えるような元素は超アクチノイドまたは超重元素と呼ばれています。現在118番元素までが各国の研究者によってその合成が報告されていますが、それより大きな原子番号の元素の報告はいまだなされていません。超重元素の研究は原子核の魔法数として知られている、フェルミオン多体系に特徴的に表れる性質に直接にかつ深く結びついており、原子核構造の統一的な理解にとって大変重要な領域です。我々の研究グループは理研の加速器からの大強度重イオンビームを用いて113番元素を世界に先駆けて合成しました。それは一つの核物理における貢献ですが、科学的な貢献とは離れますが、新元素は発見の優先権が認定されれば、発見グループに元素の命名権が与えられます。いまだ欧米(ロシアを含む)以外の研究グループが新元素の発見に関わったことはなく、もし我々グループに発見の優先権が認められれば日本初のことであり、周期表の一席を日本発の元素が占めることになります。仮定の話であるがそうなれば日本の科学への一つのインパクトある貢献といえます。現在は未発見新元素の合成へ向けた準備研究を行っています。

期待していた結果が出たことを知った瞬間は
言葉にできないほどの喜びと興奮を感じます

 世界の最先端を走っている実感を持ちながら研究をしているとき、充実感とやりがいを感じます。またトラブルが発生した時にそれを解決するために共同研究者と議論したり行動したりするときも、大変充実感があります。また結果が出るまでに長期間かかる実験をしていて、期待していた結果が出たことを知った瞬間は言葉にできないほどの喜びと興奮を感じます。難しさを感じるのは、予算的なことや様々な原因で実験が長期間できないとき。また逆に実験が続きすぎて家族につらい思いをさせるとき。

周期表の第8周期に最初となる元素の発見を行いたい

原子番号119以降の元素は周期表上で第8周期になると考えられていますが全く未知の領域です。私は、周期表の第8周期の最初となる元素の発見を行いたいと思っております。そのためには、これまで使われてきた融合反応以外の新しい反応メカニズムを開拓することが必要で、その研究に大変興味があります。重元素を大量に作ることができれば、原子ビームを作ることも夢ではなく、重元素の化学へつながる道であるとも考えています。

そのような大きな目標を達成するためには、足下の小さな努力が必要です。工夫によって小さくできる誤差を最小にすること、完全に再現できるよう記録を残すこと、得られたデーターに対し真摯であること、実験でも解析でも複数人の確認を経ていること、などを心がけています。そのような慎重さと同時に、ここぞというときは冒険することも必要です。

一旦自分がこれと決めたら
しばらくはわき目も振らずに追求してほしい

 核物理の研究には様々なアプローチがあると思います。いろいろ面白そうで目移りすることもあろうかと思いますが、一旦自分がこれと決めたら、しばらくはわき目も振らずに追求してほしいです。その結果うまくいってもいかなくてもそれからどうするか考えればよいと思います。一つ一つ丁寧にスキルアップしてだんだんに広い視野を持った研究者になっていただきたいと思います。近年、共同研究として多くの研究者が一つのテーマの実験にかかわる場合が増えています。コミュニケーション能力の重要さが研究の現場でも大きくなっています。また核物理の研究は実験にしても理論にしても応用範囲が結構広いです。将来研究者を目指すひとも企業人を目指す人も学んで損をする学問ではありません。


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