研究の目的・概要 |
実験的に観測可能な粒子であるメソン(中間子)やバリオン(重粒子)などの「ハドロン」は、 色荷を帯びたクォークとグルーオンの複合粒子である。量子色力学(QCD)は、 これらクォークとグルーオンが従う「強い相互作用」を記述し、高エネルギー領域で「漸近的自由性」、 低エネルギー領域で「閉じ込め」を示す非可換ゲージ理論として、1960年代以降、 素粒子物理学の中心的課題として精力的な研究が進められてきた。 さらに、有限温度・密度化された 「QCD物性物理」は、世界的に行われている様々な重イオン衝突実験や、高密度天体観測などの 大型実験プロジェクトと相補的に、物質と時空の起源を理論的に明らかにする発展的フロンティアとして、 近年大きな注目を集めている。 以上の様な状況のもと、1997年にマルダセナ(J.M.Maldacena,プリンストン高等研究所教授) によって発見された「ゲージ/重力対応」はゲージ理論としてのQCDの多彩な非摂動的性質を、 超弦理論の摂動計算で解析可能にしているという点で、 非摂動領域への全く新しいアプローチとして非常に注目を集めてきた。 特に、超弦理論を基盤としているため、不定パラメータの曖昧さが極めて少ないことも、 この模型の大きな魅力である。 さらに、QCD物性の複雑な有限温度・密度効果は、双対な古典重力時空の幾何学的配位で 代表されるため、全く新しい直観的で簡明な「QCD相転移のシナリオ」を提供している。 「ゲージ/重力対応」の応用は、QCDのようなハドロン物理学に留まらず、 天体核物理学や、強相関電子系、中重核の原子核物理など、極めて多岐に渡る。 本公募研究は、特にゲージ/重力対応におけるハドロン物性の包括的研究をテーマとする。 |
平成22年度:研究の進捗と成果 |
エキゾチック粒子は、従来のクォーク模型では分類できないハドロンの新形態であり、現代ハドロン物理学に新しい俯瞰的理解の構築を促すものである。特に、エキゾチック粒子の一種であるハドロン分子共鳴状態は、カラー数摂動展開(1/Nc展開)の無限次の効果が起源であり、従来の”古典”超重力解を用いたゲージ/古典重力対応の範疇を超えた新しい物理現象であると言える。 そこで本研究では、a1(1260)の内部構造を解析し、クォーク対成分とπρ分子共鳴成分の成分比を数値的に考察した。さらに、Nc=3の現実的なQCDにエキゾチック粒子が出現するシナリオを提供するため、1/Nc摂動論に対する高次効果の系統的取り扱いについて、新しい方法論を構築した[論文準備中]。 |
論文・紀要・会議録: 1. “Composite and elementary natures of a1(1260) meson”, |
学会・国際会議講演: 1.
“Exotics on Complex Energy Plane”、 2.
“A study of the admixture
properties of the a1(1260) meson”、 3.
“The admixture states of X(3872)”、
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