民井研究室(RCNP豊中研究室) --- Tamii Lab.

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2021年4月に発足しました。
連絡先 email: tamii@rcnp.osaka-u.ac.jp

研究室メンバー


民井淳(教授), 大田晋輔(准教授), 田中純貴(助教)、小林信之(准教授:準メンバー)
井上梓(教務補佐員), Viet Van Hoang Nguyen(D3), 岩崎遼太(M1), 笹川陽平(B4), 柴北洋明(B4)
稲生衣里(秘書)
2022年度卒業:新名嶺偉(M), 井村友紀(B), 富永浩介(B)
2021年度卒業:須藤高志(D), 森浩睦(M)

研究内容


陽子と中性子によって構成される原子核物質の性質を明らかにすることを通して、新しい現象や性質、宇宙の成り立ちや進化に関わる謎を解明していくことを研究目的としています。特に光と原子核の反応である光核反応に着目し、原子核の電気分極率、新しい励起モード、中性子星の状態方程式、ビッグバン元素合成、超高エネルギー宇宙線の銀河間での光分解反応などの研究を進めています。
大阪大学核物理研究センターに設置されている高分解能磁気スペクトロメータ「グランドライデン」の共同利用・開発の取りまとめを行い、世界の多くの研究者との共同実験を推進しています。

PANDORA: 軽中重核の光核反応と宇宙核反応

鉄56程度までの軽核と中重核は、宇宙の元素組成の大部分を占めており、その光核反応は宇宙核反応において特に重要です。 たとえば、地上観測により1020 eVを超える超高エネルギー宇宙線(UHECR)が地球に到達していることが分かっていますが、 その組成や加速機構は未だ謎に包まれています。 このUHECRは原子核であることが近年の観測で示唆されており、その銀河間伝搬と組成変化を決めるのは宇宙マイクロ波背景放射 との光核反応であると考えられています。 しかし、軽中重核の光励起と崩壊には、変形、αクラスター構造、陽子・中性子ペアリング、 前平衡状態の崩壊など複雑な事情が絡み、その理論的記述はチャレンジングな問題です。 この問題に実験核・理論核・宇宙核の三者が共同して挑戦するのがPANDORAプロジェクトの目的です。 核物理研究センターと南アフリカiThemba LABSにおいて仮想光子励起法による測定を、 ルーマニアで建設中のELI-NPにおいて実光子ビームによる測定を行う計画を進めています。


レーザープラズマ中の核反応

高強度レーザーの技術開発により1020 W/cm2の 高エネルギー密度を達成することができるようになってきました。 高強度レーザーを個体標的に照射することによりレーザープラズマが発生し、 数10 MeVの電子・イオンが発生することが観測されています。 つまり原子核核反応が起きる高エネルギー・高密度場が瞬間的に形成されています。 しかし原子核反応を直接観測した例はまだ極めてまれで、 ガンマ線の測定などその実験手法を含めて最先端の課題となっています。 我々はレーザープラズマ中の核反応を検出する目的と、関西光科学研究所との共同で 世界最強強度クラスのJ-KAREN-Pレーザーを用いた研究を進めています。 レーザープラズマが生じる高電場・高磁場の核反応により、 マグネターと呼ばれる超高磁場天体中での核物質の性質など、 これまで調べることができなかった性質を研究することや、 高温・高密度下での核反応を生じる新たな手法を開発することを目指しています。

不安定核停止標的による核反応実験(BRILLIANT)とビッグバン元素合成

宇宙のはじまりのビッグバンから数100秒の間に、質量数7のリチウム・ベリリウムまでの元素が生成されたことが分かっています。 しかし、重水素やヘリウム4などの観測量は理論計算と一致しているのですが、 リチウムの観測量は理論の1/3程度と大きな開きがあることが問題となっています。 この問題は宇宙リチウム問題と呼ばれます。 まだ観測されていない未知の素粒子があることや、現在の宇宙論に修正が必要であることなどが提唱されています。 われわれは原子核物理学の観点から、リチウム生成に至る重要な反応の精度を上げることで問題の鍵をつかむための研究を進めています。 不安定核であるベリリウム7を停止した標的として作り、重陽子を入射した反応により陽子とヘリウム2つに壊れる反応を、 ビッグバンのエネルギー領域にて精度良いデータを取得することに成功しました。 現在データを最終結果にまとめる解析作業を進めています。 この様な不安定核を標的とする新たな実験手法の開発をBRILLIANTプロジェクトとして進めています。


巨大共鳴のガンマ崩壊:減衰と分散の謎

原子核にはそれを構成する核子のほぼ全てが関与する集団運動として巨大共鳴があります。 巨大双極子共鳴(GDR)はその最も有名な例で、陽子と中性子のかたまりの相対運動として説明され、 ほぼ全ての原子核で観測されています。 振動周波数はよく分かっているのですが、振動が減衰していく機構はまだ理論的にも記述できていません。 規則だった集団的な運動から、個々の核子の熱的な振動へとエネルギーが散逸していく機構が重要で、 巨視的には中性子流体と陽子流体の間の摩擦である粘性を理解する必要があります。 われわれは最も純粋な崩壊チャンネルである巨大共鳴からのガンマ崩壊を捕まえることで、 規則的な集団運動と熱的な運動とを成分分離して測定することを目指しています。 ガンマ崩壊は1%という低い確率でしか起きませんが、ジルコニウム90を標的とする実験に成功し、 これまで予想していなかった結果が得られ始めています。


0度陽子散乱による原子核の電気・磁気的励起の系統的測定と和則


参考資料


その他