*ハドロン物理学 [#u24ade41]

**はじめに [#hadorn_intro]
陽子や中性子は、湯川博士によって予言された (パイ) 中間子を交換しあうことで強く結合し、およそ &tex($10^{-15}$,,80%); m の半径をもつ原子核を構成します。
さらに、これら原子核の構成要素である核子((陽子・中性子をまとめて核子と呼びます。)) や中間子は、クォークやグルーオンと呼ばれる素粒子から構成される広がりをもった複合粒子であると現在考えられています。
クォークやグルーオンから構成される粒子のことをまとめてハドロンと呼び、
現在数百種類のハドロンが確認されています。

「ハドロンはクォーク・グルーオンで構成される複合粒子」と簡単に言いましたが、「クォーク (カラー) の閉じ込め」((地球上のような低温・低密度の環境では、クォークやグルーオンは「色荷」と呼ばれる電荷に相当する量が必ずゼロになるように互いに結合しあってハドロンを構成し、クォークやグルーオン自体は単体で観測されることがないという現象。))という大変特異な現象のために、ハドロンがクォークやグルーオンから実際にどのようにできあがっているかについてはほとんど分かっていません。

当ハドロン研究グループでは、様々な理論的手法を駆使し、
物質の最も基本的な構成要素であるクォーク・グルーオンから
ハドロンが生成されるメカニズムをはじめ、ハドロンに関する様々な現象・性質
の解明を目標に日夜研究を進めています。
また、宇宙誕生直後に相当する超高温・高密度状態や、
中性子星もしくはそれ以上の低温・高密度星の内部など、多様な外部環境の変化に対する
クォーク・ハドロン物質の応答を調べる物性研究も活発に進めています。


**メンバー [#hadron_member]

-[[保坂 淳>http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~hosaka/]] / Hosaka, Atsushi~
RCNP教授
-鎌野 寛之 / Kamano, Hiroyuki~
RCNP特任助教
-[[土岐 博>http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~toki/]] / Toki, Hiroshi~
RCNP名誉教授 / 産学連携本部ベンチャービジネスラボラトリー特任教授
-Molina, Raquel~
RCNP特任研究員
-[[永廣 秀子>http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~nagahiro/]] / Nagahiro, Hideko~
RCNP招聘研究員 / 奈良女子大学助教
-[[金子 寛弥>http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~kanekoh/]] / Kaneko, Hiromi~
博士課程4年
-大古田 俊介 / Ohkoda, Shunsuke~
博士課程3年
-山口 康宏 / Yamaguchi, Yasuhiro~
博士課程3年
RCNP招聘研究員 / 奈良女子大学准教授
-柴田 卓也 / Shibata, Takuya~
博士課程2年
博士課程3年
-Kim, Sangho~
博士課程1年
-定藤 克法 / Sadato, Katsunori~
修士課程2年
博士課程2年


**研究プロジェクトの概要 [#hadron_project]
*** ハドロン分光: 反応理論に基づくアプローチ[#hadron_project2]
ハドロン励起状態は、反応の連続状態と強く結合して瞬時に崩壊する非常に不安定な粒子(共鳴粒子)である。しかしながら、構成クォーク模型などの静的なハドロン模型では、ハドロン励起状態は多くの場合安定粒子として取り扱われ、崩壊を記述する反応のダイナミクスがハドロン励起状態のスペクトルや内部構造に与える効果はほとんど明らかにされてこなかった。

この状況のなか、高エネルギー加速器実験の進展により、1990年代後半から様々なハドロン生成反応の高統計・高精度の実験データが報告され、ハドロン励起状態の情報を実験データから直接引き出そうという試みが近年盛んに行われている。

我々の研究グループでは、反応チャネル間の動的な結合を適切に取り入れた反応模型を出発点にしてさまざまな種類のハドロン生成反応を包括的に解析することにより、「共鳴粒子」という観点からハドロン励起状態の研究を行っている。「物理的な共鳴粒子」と「静的なハドロン模型におけるハドロン励起状態」の関係を反応ダイナミクスと関連付けて明らかにすることや、エキゾチックな量子数をもつハドロンを含む新しいハドロンの探索・発見を目指す。また、我々の研究で得られた知見にもとづき、SPring-8やJ-PARCで計画されているハドロン反応実験への理論的側面からの協力を行っている。
#ref(figures/hadron_resonances.png,center,nolink,33%)


*** 有限温度・密度におけるクォーク・ハドロン物質 (QCD物性)[#hadron_project3]
我々がよく知っている原子・分子は温度・密度を変化させていくことで気体・液体・固体、さらにはプラズマと様々な状態になることが知られてい ます。同様に、クォーク・グルーオンからなるハドロンも温度・密度の変化により様々な状態があると考えられています。

&ref(public/chiral_symmetry.pdf,カイラル対称性);の自発的破れはクォークに質量を与え、低エネルギー領域におけるハドロンの性質の解明に重要な役割をはたします。高温・高密度 になることで対称性は回復していくと考えられていますが、その振舞いはまだ完全には解明されていません。閉じ込めも同様に温度・密度の変化に よって振舞いが変化すると考えられています。これらの現象が絡み合うことで、クォーク・ハドロンの相構造は複雑なものとなります。
クォーク・ハドロン物質の性質の解明は強い相互作用が持つ現象を理解するために重要な研究であり、我々の宇宙がどの様にして構成されているの かを解明する鍵となります。

我々は、閉じ込めとカイラル対称性に注目しつつ、クォークからハドロンを構成する手法を研究し、これを有限温度密度に適用していくことを目指 しています。強い相互作用を記述するゲージ理論から、統計力学に至るまで幅広い知識を活用した魅力的な研究です。

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