核物理研究センター

567 大阪府茨木市美穂ケ丘10−1
電話.(06)877−5111 ファックス.(06)879−8899
センター長 江尻 宏泰、理学博士

 核物理研究センター(RCNP)は全国共同利用の研究センターであり、日本学術会議の 勧告により、昭和46年に設置された。設備は、K=140MeV AVFサイクロトロン, K=400MeVリングサイクロトロン及びいくつかの最先端測定器系から成り、国内外の 研究者に活用されている。

 AVFサイクロトロンは昭和49年に建設された可変エネルギーの加速器であり、陽子, 重陽子,ヘリウム3,アルファ粒子,軽重イオンをそれぞれ85,70,175,140, 140*Q**2/A MeVまで加速する。偏極陽子及び偏極重陽子も利用できる。 AVFサイクロトロンは現在では安定に稼働しており、リングサイクロトロンの入射器とし て使用している。

 高分解能スペクトログラフ「雷電」,偏極スペクトログラフ「デュマ」,反跳核質量分析 器「カープ」等の多くの実験装置が設置された。昭和51年初頭にAVFサイクロトロンで 加速されたビームによる共同利用実験が開始され、核物理研究センターは低エネルギー精密 原子核物理学及び境界分野での活発な研究機関の一つに位置付けられている。

 10年余りの稼働後、パイ中間子生成可能な中間エネルギー原子核物理学を拓くために、 昭和62年にK=400MeVリングサイクロトロンの建設を開始した。リングサイクロト ロン,高分解能反応粒子スペクトログラフ「大雷電」,ビームスィンガーと中性子測定装置, 重イオン二次ビームコースが平成3年に完成した。AVFサイクロトロンとリングサイクロ トロンから成る加速器複合系は、陽子,重陽子,ヘリウム3,アルファ粒子,軽重イオンを それぞれ400,200,510,400,400*Q**2/A MeVまで加速する。

核理学研究部[素粒子及び原子核物理学]

 昭和47年に「測定器部門」が設置され、昭和51年に「回路部」が設置された。AVF サイクロトロン及びリングサイクロトロンの大型測定装置はこの部門によって建設され、そ れ等はユニークな設計と稼働成績を有している。

 リングサイクロトロンと関連測定装置を用いた中間エネルギー原子核物理学の研究内容の 例には下記のものがある。 1)原子核集団運動と原子核巨大共鳴の系統的研究。 2)原子核構造,弾性散乱,非弾性散乱,原子核反応。特に高運動量移行での測定と未知の 短距離相関現象の探求。 3)原子核構造及び原子核反応に於ける相対論的効果。 4)低−高励起エネルギーでのスピン−アイソスピン相関。 5)核子−核子相互作用に基づく重イオン反応と偏極現象の研究。 6)パイ中間子生成領域の原子核でのパイ中間子生成,相互作用及び崩壊機構。

 その他の研究内容には下記のものがある。 1)低放射線バックグラウンド地下実験施設での非加速器実験によるニュートリノ物理学, 宇宙暗黒物質の探索。 2)1−4GeVレーザ電子光を用いた原子核・核子内でのクォークを基礎とするハドロン の性質解明。 3)素粒子・原子核反応情報制御測定システムの開発。

江尻 宏泰 教授、 理学博士 [電話。06−879−8900]
  1. 実験原子核物理学
  2. 実験素粒子物理学
藤原  守 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8938]
  1. 実験原子核物理学
  2. 原子核測定器開発
野呂 哲夫 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8939]
  1. 実験原子核物理学
  2. 原子核測定器開発

クォーク核物理研究部

 昭和47年に「理論部」が発足した。本研究部では、クォーク核物理学の理論的研究,及 び原子核物理学と素粒子物理学の境界領域の研究を行う。それ等は核理学研究部の活動と密 接に関係している。

 クォーク核物理研究部は、現在では理論物理学と実験物理学の両者から成る。研究内容の 例は下記のとおりである。 1)核物理研究センターのリングサイクロトロンの加速粒子ビームを用いる原子核反応の理 論的解析。 2)クォーク閉じ込めの理論的研究とハドロンの性質の研究,ビッグバンでのQCD[量子 色力学]相転移と元素の合成。 3)不安定核の研究と天体ハドロン物理・超新星爆発の物理の研究。 4)超大型スーパーコンピュータを用いた数値クォーク核物理学。 5)ハドロンの構造関数の実験的及び理論的研究。ハドロンのクォーク構造の解明。

土岐 博  教授、 理学博士 [電話.06−879−8941]
  1. 理論クォーク核物理学
  2. 理論原子核物理学
水野 義之 助教授、 理学博士 [電話.06−879−8943]
  1. 実験クォーク核物理学
  2. 実験原子核物理学
  3. 原子核測定器開発

加速情報研究部[加速器物理学及び核情報科学]

 昭和45年に理学部原子核実験施設に「核構造部門」が設置され,昭和46年には同部門 の振替により、核物理研究センターに「加速器部門」が設置された。AVFサイクロトロンは この部門によって建設された。昭和48年に「保守運転部」が設置された。昭和53年に 「加速器自動制御部門」が設置された。昭和54年に「核データ処理部門」が設置された。

 AVFサイクロトロン及びリングサイクロトロンの性能向上のために、多くの開発研究が 行われている。それ等の例は、加速ビームエネルギーの高分解能化,機器の作動安定化,種 々のイオン加速,加速強度の向上である。更に、クーラー・シンクロトロンの開発研究が進 行中である。

 原子核物理学の実験的・理論的研究を遂行するために、原子核物理学用のデータ処理及び 情報ネットワークの開発研究が行われ、その成果は国内研究者に利用されている。計算機系 はFACOM M−100/200,VAX,Sun及びパーソナルコンピュータから成り、 オンラインデータ処理に使用される。このシステムは国内外の研究機関と接続され、アクセ ス可能である。

三浦  岩 教授、 理学博士 [電話。06−879−8932]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
山嵜  魏 教授、 理学博士 [電話。06−879−8935]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
  3. 核データ処理
佐藤 健次 教授、 理学博士 [電話。06−879−8930]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
細野 和彦 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8936]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
斎藤 高嶺 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8934]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
板橋 隆久 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8942]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
畑中 吉治 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8934]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学

核放射線研究部[学際研究]

 昭和51年に「放射線管理部」が設置され、サイクロトロン施設の放射線安全制御を管理 している。施設は、原子核研究だけでなく、原子物理学・材料科学・生物学・医学などの学 際研究に幅広く活用されている。
清水  昭 助教授、 理学博士 [電話。06−879−8937]
  1. 加速器物理学
  2. 実験原子核物理学
  3. 放射線管理

出版物

RCNP ANNUAL REPORT (英語、年1回)