5.ガス
[問合せ、質問はイエローページを参照]
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常用の温度において圧力(大気圧との差圧、以下同様)が1MPa(約10気圧)以上の高圧ガス(アセチレンは0.2 Mpa以上、約2気圧)及び、常用の温度において圧力が0.2 Mpa(約2気圧)以上の液化ガスを高圧ガスとよぶ
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高圧ガスの製造、貯蔵、取り扱いに関しては高圧ガス保安法、一般高圧ガス保安規則等に規定
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設備や装置の製作、変更は高圧ガス製造保安技術管理者(イエローページ参照)に連絡
u
特殊材料ガス、毒性ガスの使用についてはガス担当者(イエローページ参照)に連絡
<一般事項>
○
ガスは、高圧ガスとそれ以外のガスに分類されます。
○
圧力と体積の積が4MPa・ℓ(約40ℓkg/cm2G)を超えるものを製作する場合には高圧ガス製造保安技術管理者に連絡して下さい。
ガスの取扱い
1.
ガスの性質
ガスの持つ危険性に関して次のような性質があります。
(1) 可燃性ガス
可燃性ガスは空気中の混合比がある範囲の時に燃焼する。これを燃焼範囲または爆発範囲といい、この範囲中での燃焼速度が音速を超える場合は爆轟と呼ばれます。
例えば代表的なガスの場合次のようになります。
燃焼範囲(爆轟)(%) |
||
水素 (H2) |
0.0899
(0.0695) |
4.0−75(18−59) |
メタン (CH4) |
0.717
(0.555) |
5.3−14 |
アンモニア (NH3) |
0.771
(0.597) |
16−25 |
アセチレン (C2H2) |
1.17
(0.907) |
2.5−81 |
プロパン (C3H8) |
2.02
(1.56) |
2.1−9.5 |
ブタン (C4H10) |
2.69
(2.08) |
1.8−8.4 |
次のような注意が大切です。
1)
空と思われる容器でも着火の危険性があります。
2)
換気に注意して下さい。
3)
着火源をなくす。スパーク、裸火に注意して下さい。
(2) 毒性ガス
研究室でよく使われるガスの内、毒性のあるものは一酸化炭素、塩素、アンモニア等です。ガスを扱い意識を失った時は窒息しないよう頭を後ろに反らせ横向きに寝かせて医師の救援を待って下さい。毒性を示すガスは可燃性の物が多いので注意して下さい。
(3) 支燃性
支燃性ガスの主なものは酸素ですが、他に空気やフッ素、塩素なども含まれます。酸素ガス自体は可燃性、毒性を持たないが、純酸素は特に危険です。濃い酸素中ではほとんど全ての物が発火します。ボンベの口金のグリースでも発火することがあります。
1)
液体空気は窒素から蒸発するのであとに酸素が残ることがあります。
2)
低濃度、高濃度の酸素は人体に傷害を与えます。作業場所における酸素濃度は18%以上に保たねばならなりません。また60%以上の高濃度酸素を12時間以上吸入すると、肺に充血をきたし、失明、死亡の恐れがあります。
(4) 酸素欠乏
酸素以外のガスが大量に室内に洩れるとガスが有毒でなくても呼吸困難に陥る可能性があり危険です。万一に備え、閉鎖された狭い室内での作業は行わないで下さい。
1)
人体にとって許容される酸素濃度の下限は18%。6%以下では数回の呼吸で意識を失います。
2)
特に液体窒素、炭酸ガスに注意して下さい。
その他、酸欠の章をご参照下さい。
(5) 特殊材料ガス
高圧ガス保安協会では、従来工業的に用いられてこなかった新規なガスのうち極めて毒性の高いもの、自然発火性、分解爆発の危険性があるものなど39種類を選び、特殊材料ガスと命名しています。
特殊材料ガスは下記のものです。
I.
|
シリコン系 シラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、四フッ化ケイ素、 ジシラン |
II.
|
ヒ素系 アルシン、三フッ化ヒ素、五フッ化ヒ素、三塩化ヒ素、五塩化ヒ素 |
III.
|
リン系 ホスフィン、三フッ化リン、五フッ化リン、三塩化リン、五塩化リン、 オキシ塩化リン |
IV.
|
ホウ素系 ジボラン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素 |
V.
|
金属水素化物 セレン化水素、ゲルマン、テルル化水素、スチビン、水素化スズ |
VI.
|
ハロゲン化物 三フッ化窒素、四フッ化硫黄、六フッ化タングステン、六フッ化モリブデン、 四塩化ゲルマニウム、四塩化スズ、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、 五塩化モリブデン |
VII.
|
有機金属化合物 トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジウム、 トリエチルインジウム |
このうち可燃性で毒性危険性の高い7種類のガス、モノシラン、ジシラン、アルシン、ホスフィン、ジボラン、セレン化水素、モノゲルマン、は高圧法において特殊高圧ガスに指定され、高圧ガスとしての製造・消費が規制されています。
2.
高圧ガスボンベの取扱い
(1) 取扱いについての注意事項
1)
ボンベは原則として実験室内等に設けた「ボンベ固定場所」で使用して下さい。
2)
保管・使用する際には固定金具に縛り付ける等、転倒・転落防止策を講じて下さい。
3)
空ボンベ又は長期にわたって使用しないボンベは「共同保管場所」(M実験室外北壁、AVF準備室外北壁)に戻して下さい。
4)
可燃性ガス(水素、アセチレン他)等を使用する際は、近辺に消火装置を置いて下さい。
5)
使用設備は必要に応じてガス漏れ等がないか確認して下さい。
6)
レギュレータ(圧力計及び調整器)は適切かつ正常なものを使用して下さい。
7)
ゴムホース等が通路を横断している場合は、保護装置、注意書き等をして下さい。
8)
使用中のボンベには、常時バルブ開閉ハンドルを取り付けておいて下さい。(開度は1.5回転以内)
9)
酸素接触部に油脂膜があると発火の危険があるので、油脂類が付着した素手又は手袋で酸素ボンベ及び器具を操作しないで下さい。
10)
取扱者は、保護具を十分に着用して下さい。(安全靴、眼鏡、手袋等)
(2) 購入
1)
購入から受け入れの手配は原則としてセンターのガス担当者が行いますので、購入希望者は所定の購入申込書を添えて担当者に購入を依頼して下さい。
2)
センターのガス担当者は以下を行います。
A) 業者への発注
B) ボンベ搬入時の立会い、及び管理境界柵の開錠
C) 購入申込者等を記したタグをボンベに取り付ける
D) 空ボンベの業者へ返却
E) ボンベ管理台帳へ購入・返却の記載
3)
緊急の場合等には購入希望者が直接手配することが出来ますが、その場合に搬入時の立会いを行って下さい。また、後刻速やかに担当者に報告して下さい。
4)
過剰な予備ボンベ購入は避けて下さい。(共通予備ボンベを使用して下さい。)
5)
有毒ガス・可燃性ガス等の購入・使用に際しては事前にガス担当者にご相談下さい。
(3) 専有者表示
購入時に各ボンベにタグを付け、専有者が明示して下さい。
3.
低温液化ガス
(1) 取扱についての注意事項
1)
低温液化ガスは文字通り低温であり、蒸発によって気化します。気化によって閉じ込められた容器の圧力は上昇するので、特別な場合(例えば発火性、毒性のある場合はそのためのリザーバー等が必要になる)を除き、気抜きして圧力を逃がして下さい。液体でも蒸発したガスでも低温であるので、凍傷を起こさないように手で触れず防護具(例えば皮手袋)を着用して作業して下さい。
2)
また、気化したガスを吸い込むと酸素不足で傷害を起こすので、容器を覗き込んだり蒸気に頭を入れたりしないように注意して下さい。
3)
次項の気体/液体体積比の表でも分かるように一般に蒸発ガスは1000倍近くの膨張があることを念頭に置き、狭い室内で取り扱うときは換気に十分注意して下さい。容器の転倒や移送の際の液漏れは、上記の危険性のほか床のペンキや張り板をしばしば損傷するので注意して下さい。
なお、安全とは直接関係しないが、常温の容器や実験装置に液を移送するに際は気化熱、潜熱をうまく利用して容器の予冷を行い、できるだけロスを少なくして効率よく移送することが大切です。
(2) 液化ガスの性質
代表的液化ガスの物理的性質は次の通りです。
液化ガス |
沸点 K |
蒸発熱 kJ/l |
液体密度 Kg/l |
気体/液体体積比 |
酸素 |
90.19 |
300 |
1.14 |
875 |
窒素 |
77.35 |
161 |
0.81 |
710 |
水素 |
20.40 |
31.6 |
0.07 |
780 |
ヘリウム |
4.22 |
3.1 |
0.125 |
780 |
(3) 液体酸素
液体状態でも化学的活性が高いです。アルミニウム、チタンや有機化合物と共存すると機械的衝撃で爆発することがあります。
(4) 液体窒素
純粋な液体窒素は空気に触れると急速に酸素を取り入れます。90.16Kでは酸素の100%溶存も可能です。十分な換気を行い、酸欠に注意して下さい。
(5) 液体水素
燃焼性が高く燃焼範囲が広いです。気化した水素は空気より14倍軽く拡散速度が早く非常に危険です。
高圧ガス容器(通称「ボンベ」)の取扱い
1.
運搬
(1)
容器弁を確実に閉め、必ずキャップを付けて下さい。
(2)
容器を粗暴に扱わないで下さい。容器はどのような場合にも衝撃を与えないで下さい。
(3)
容器をクレーン等で吊る時は、籠やバックもしくは専用の吊り具を使用して下さい。リフティングマグネットを使用したり、ワイヤーロープで一本吊りは、決してしないで下さい。
(4)
容器を床上で移動するときは、キャリアー(キャスター付きスタンド)を使用するか又は、斜めに立てて容器底面で転がして移動して下さい。容器を2人で持ち歩いたりしないで下さい。
2.
保管
(1)
容器を使用する場合は、あらかじめ保管場所(置場)を定めて下さい。置場は、直射日光を避け、通風、換気のよい場所を選んで下さい。
(2)
容器を保管する場合、ボンベスタンドを利用し、キャップを付け、転落、転倒防止のためにチェーンやクランプで確実に固定して下さい。特に、地震に対する対策を十分にして下さい。
(3)
キャスター付きスタンドでの保管はしないで下さい。一時的に使用する場合は、必ず、転倒や自走の防止措置をして下さい。
(4)
容器の横置きが許されるのは一時的な保管に限ります。その場合、必ず転がり防止措置(歯止め)をして下さい。
(5)
可燃性ガスや酸素容器の近くは「火気厳禁」です。
(6)
可燃性ガスや酸素容器の近くに油脂類、ぼろ布等燃えやすいものを置かないで下さい。
(7)
可燃性ガス容器は、電気機器、配線、アース線の近くに置かないで下さい。
(8)
ガスは種類毎に区別して保管して下さい。特に、可燃性ガス容器と酸素容器は同じ場所に保管しないで下さい。
(9)
容器は「充」「空」の表示を行い、それぞれ別々の場所に保管して下さい。
(10)
容器には使用者又は管理者の氏名を表示して下さい。
3.
使用
(1)
容器弁(元弁)はスムーズに、静かに開閉して下さい。急激に開くと着火することがあります。
(2)
ガスの使用を中断、終了する場合は、必ず容器弁を確実に閉めて下さい。
(3)
容器弁の具合が良くない時は直ちに業者に連絡し、その容器は使用しないで下さい。
(4)
酸素容器は、油類が少しでも附着すると発火の原因となります。油のついた手、手袋、工具で取扱わないで下さい。
(5)
圧力調整器、減圧弁、圧力計、導管等は、そのガス専用のものを使用し、他のガスのものを流用しないで下さい。特に、酸素容器の場合「禁油」表示のあるものを使用して下さい。
(6)
容器や容器弁を加温する場合は、40℃以下の温湯で行って下さい。
(7)
容器間でのガスの移し換え(移充填)は法規で禁止されています。
(8)
容器を使用しなくなったときは、必ず業者に返却して下さい。また、工事で使用した容器は、必ず工事業者が持ち帰るように指導して下さい。
(9)
容器の異常を発見したときは、直ちに使用責任者に通報して下さい。
4.
特殊材料ガスの取扱い
(1)
特殊材料ガスを本センターに持込・使用する場合には、あらかじめ特殊材料ガス・毒性ガス使用願を提出して下さい。この使用願には、使用方法・設備図面・技術基準について記述した書類を添付して下さい。形式は問いません。
(2)
特殊材料ガスのうち特殊高圧ガスに指定されているガスは、高圧ガスの状態で使用することはできません。
(3)
特殊材料ガスを放出するときは、除害装置などで無害化したのち、所定の排気ダクトへ放出して下さい。
(4)
ガス漏れ検知器が鳴ったら
1)
できる限りガス容器の元弁を閉じて下さい。
2)
周辺の作業者に知らせ、避難させて下さい。
3)
周辺の火気使用を停止させて下さい。
4)
担当者に急報して下さい。
5.
液化ガスの取扱い
(1)
液化ガスの取扱いでは、次のことに注意して下さい。
1)
液体の気化に伴う圧力上昇
2)
空気中の水分の凍結による緊結やブロック
3)
液化ガスや低温ガスのリークを原因とする、酸素凝縮による大気中の局所的な酸素濃度の上昇
4)
凍傷
5)
酸素欠乏や低温ガスの吸入傷害
(2)
低温作業を行うときは、皮手袋等の保護具を用意して下さい。ただし、液化ガスがかかったとき、水分が凍結して手袋が脱げなくなるため、軍手の着用は禁止します。
(3)
低温容器は機械的に弱い構造になっているので、移動や運搬は慎重に行って下さい。
(4)
大型低温装置の断熱真空の測定には、ガラス製機器は使用しないで下さい。
(5)
低温装置には、内圧測定用圧力計を備えて下さい。
(6)
液化ガスや気化ガスを放出する場合には、酸素欠乏に注意して下さい。不活性ガスにより酸素濃度が著しく低下(16%以下)した空気を吸入しないで下さい。
参考文献:
理化学辞典
理科年表2002
高圧ガス保安技術(中級)
CRC Handbook