サイクロトロンとは,直流磁場あと高周波電場を用いて荷電粒子 を加速する装置です.電磁石の磁極間隙全体を真空にし,その中に 加速電極を置き電極に高周波電圧を与えます.中心部に置かれたイ オン源からイオンを発生させると,イオンは電極間の電場によって 加速されます.加速されたイオンは磁場中で円軌道を描いて運動し ます.半周後再び電極間を通過するとき,高周波の位相が半周期変 化していれば,イオンは更に加速されて,より大きな半径の軌道を 描きます.この様にしてイオンは繰り返し加速されながら,渦巻状 の軌道を描いてイオンは最大半径,最大エネルギーに達するとデフ レクター等によって,サイクロトロンの外部に取り出されます.
しかしイオンのエネルギーが高くなると,相対論的効果によって その質量が増大するため,一様磁場のもとではイオンの回転周期は, 軌道半径と共に大きくなって,加速電極にかけた高周波電圧の周期 との間にずれが生じてきます.この結果,一様磁場のサイクロトロ ンでは加速エネルギーに一定の限界があります.この限界を超えて, 更に高いエネルギーまでイオンの回転周期を一定に保たせた上で, 軌道面に垂直な方向の振動に対して安定に加速する方法として,円 周方向で磁場が変化する磁場(Azimuthally Varying Field 略し てAVF)のもとでイオンを加速する方法があります.この原理を 用いたものがAVFサイクロトロンで,加速エネルギーが高く,大 強度のイオンを加速することが出来,しかもエネルギーの一様性が よいという優れた性質があります.
Last Update: November 28, 1994