AVF サイクロトロン

AVFサイクロトロンおよびAVFサイクロトロン運転制御用操作卓

 サイクロトロンとは,直流磁場あと高周波電場を用いて荷電粒子 を加速する装置です.電磁石の磁極間隙全体を真空にし,その中に 加速電極を置き電極に高周波電圧を与えます.中心部に置かれたイ オン源からイオンを発生させると,イオンは電極間の電場によって 加速されます.加速されたイオンは磁場中で円軌道を描いて運動し ます.半周後再び電極間を通過するとき,高周波の位相が半周期変 化していれば,イオンは更に加速されて,より大きな半径の軌道を 描きます.この様にしてイオンは繰り返し加速されながら,渦巻状 の軌道を描いてイオンは最大半径,最大エネルギーに達するとデフ レクター等によって,サイクロトロンの外部に取り出されます.

 しかしイオンのエネルギーが高くなると,相対論的効果によって その質量が増大するため,一様磁場のもとではイオンの回転周期は, 軌道半径と共に大きくなって,加速電極にかけた高周波電圧の周期 との間にずれが生じてきます.この結果,一様磁場のサイクロトロ ンでは加速エネルギーに一定の限界があります.この限界を超えて, 更に高いエネルギーまでイオンの回転周期を一定に保たせた上で, 軌道面に垂直な方向の振動に対して安定に加速する方法として,円 周方向で磁場が変化する磁場(Azimuthally Varying Field 略し てAVF)のもとでイオンを加速する方法があります.この原理を 用いたものがAVFサイクロトロンで,加速エネルギーが高く,大 強度のイオンを加速することが出来,しかもエネルギーの一様性が よいという優れた性質があります.

AVFサイクロトロンの性能

電磁石
 磁極径        2.3 m
 磁極間隙  最小   20.6 cm
       最大   34.7 cm
 平均磁場       1.6 T
 トリムコイル     16 セット
 バレーコイル     3 × 3 セット
 重量         400 トン
加速系
 ディー        単一 180゜タイプ
 共振器        (短絡板移動型)
 加速周波数      6〜19 MHz
 最大加速電圧     80 kV
引出系   静電型デフレクター
イオン源
内部イオン源      オークリッジ型
外部イオン源      原子線型偏極イオン源               (偏極陽子・偏極重陽子)
            ECRイオン源

Last Update: November 28, 1994