Magnetic Spectrograph "Grand Raiden" と "LAS"。 要するに、大きな磁石だ。1GeVのエネルギーを持つ陽子 (1.0x10^9 Vの電極で加速された陽子に相当)まで分析できるのだ。 良くある説明「風呂桶に舟の玩具を浮 かべたとしましょう指を小刻みに動かして数センチの波長のなみを立てると、 波が舟にあたって乱れることが観測できます。今度は米粒大のものを浮かべて 同じように波を立ててみましょう。今度は波の乱れがはっきりとは見てとれません。 同じように舟の玩具でももっと大きな波の中では波の乱れは明確ではありません。 このように、より細かなものを見るにはより短い波長を用いなければなりません。」 というわけで、可視光の波長よりもっと小さなものを見るにはより短い波長を持つ 光を用いなければならないのだ。波長が短いこととエネルギーが高いことは 対応している(ドブロイ波)。紫外線(可視光より波長が短い)が肌や目に有害 なのはそのエネルギーが高いため細胞を破壊してしまうからだ(と思う)。 原子核の大きさよりも十分短い波長の光を用いると原子核の内部を調べること ができる。実際このような目的で作られた加速器も世界にはいくつか存在する。 一方、陽子などの粒子線を用いて原子核を調べる時も同様で、原子核内部を調べるには 原子核の大きさよりも短い波長の粒子線を用いる。光を用いるのと大きな違いは、 光が電磁相互作用を媒介する粒子であるのに対して、陽子などの原子核を用いると 核力(強い相互作用)を介して原子核内部を調べることができる点だ。 それが我々の加速器の領域だ。 さらに、原子核を構成する陽子、中性子の構造、さらに。さらにこれらを構成する Quarkの構造(そんなものがあるかどうかはまだわかっていないが)を調べるには さらに高いエネルギーが必要となる。
加速されたビームは図中の下に見えるパイプを通ってやってくるぞ。 真中のアルミの筒(散乱槽とよぶ)におかれたターゲットとなる原子核(資料) で散乱された粒子を磁石(青色のでかい箱)で分析するのだ。 ターゲットは良いエネルギー分解能で測定するためには薄くする必要があり、 アルミホイル程度の厚さだ。余談だが、実際自然界に安定に存在するアルミは 原子量27しかないので、アルミを 調べたい時にはアルミホイルを使うこともある。もっとも安上がりなターゲットだ。 一方、錫は世間ではたいして値の張る金属ではないが10の同位体が安定に 存在するので、ターゲットとして使うにはこれらを分離したものを使わなければ ならずお高いターゲットといえる。さらに金は世間では高価な金属だが原子量197 のみが安定なのでアルミの次に安価なターゲットといえる。意外に面倒なのは ありふれている物質だが、水素とか、酸素とか、カルシウムとか化学的特性の 激しい物質だ。
磁石で運動量を分析された荷電流子の位置を測定する装置と、 そのスピンの向きを測定する装置。原理的には、たいがいの測定装置 は荷電流子が物質中を高速で通過する際に生成するイオンまたは自由電子を 直接あるいは間接的に捕獲することにより動作し、電気信号に変換する。 粒子の通過した位置を 数百ミクロンの精度で測定したり、粒子の通過した時間を1ナノ秒以下の精度で 測定したりする。
測定器で捕捉された粒子の軌跡を電気信号(パルス)に変換し、 さらにデジタル情報に変換し計算機に転送する装置。最近の半導体技術 (通信、計算機技術)の急速な発展にともない高速、大容量のデータ収集 が可能になった。数千チャネルに及ぶ測定器からのパルスを数十マイクロ秒 で収集できる。
陽子なら400 MeV まで加速できる。高分解のを得るための いろいろな工夫がされている(らしい)。整然と並んだ緑の固まりが電磁石で、 この中を荷電粒子がくるくる回りながら徐々に(といっても数マイクロ秒の間にだが) 加速される。加速の方法はハンマー投げに似ている。球を投げる人は真中にいて球に 結び付けられた紐を球の回転に合わせて紐を引く。これを磁場と電場で行なうのが サイクロトロンだ。同じ程度の力を持つ人間が投げているのにハンマーなげは 砲丸なげ(実際このような方法で粒子を加速する装置もある)より圧倒的に球を 遠くに飛ばせる。理由を考えてみよう。
廃止