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Faculty of Science, University of Zagreb/p>

野村 昂亮

Kosuke Nomura

主な経歴

2007年3月

東京大学理学部物理学科 卒業

2009年3月

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修士課程修了

2009年4月

日本学術振興会特別研究員 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻

2012年3月

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 博士課程修了

2012年4月

日本学術振興会海外特別研究員, Universität zu Köln

2013年9月

Marie-Curie fellow, GANIL, CEA

2015年10月

博士研究員, University of Zagreb

2016年4月

日本学術振興会特別研究員, 筑波大学計算科学研究センター

2018年1月

博士研究員, University of Zagreb

2018年12月

文部科学省卓越研究員, 日本原子力研究開発機構

2019年5月

Assistant Professor, University of Zagreb

原子核理論、原子核構造

大学に入る前から数学や物理は好きでしたが、大学の教養課程で量子論に特に興味を持ちました。原子核物理に直接触れたのは学部3年くらいの時、当時は素粒子・原子核物理学のある教科書を輪講したのと、学生実験で原子核の回転励起準位を測ったことがあります。原子核中の個々の核子(陽子と中性子)が互いに複雑な相互作用を及ぼし合いながら一見全くバラバラに運動しているにもかかわらず、全体として非常にシンプルで美しい秩序を示すことに非常に興味を持ち、大学院でこの分野に進みました。これは審美的な感覚によるものかもしれません。有限個の核子からなる量子多体系である原子核では、重力を除く自然界の全ての基本的相互作用が深く関わり、基本的対称性の検証と物質の起源の解明において原子核物理の知識は欠かせません。また、核物理にはこれら基礎的な問題以外にも様々な自然科学分野への応用の可能性があります。原子核では、表面の変形による振動や、楕円体変形して回転するといった集団運動が起き、特徴的な振動・回転励起スペクトルや電磁遷移のパターンとして観測されます。有限の量子多体系がどのような幾何学的形状を持つのか、またそれを決定する微視的な機構は何かといった疑問は古くから原子核物理学の中心的なテーマであり、一般の量子多体系にも通じる、学術的にも興味深い研究対象と考えています。私はこのような問題に興味を持ち、特に原子核集団運動の微視的かつ統一的な記述を行うための理論の構築と、それをもとにした基礎的な物理の課題の解明に向け、研究活動を行なっています(http://www.phy.hr/~knomura/index_j.html )。

物理の研究や勉強をしている時、論文執筆や講演など何らかのアウトプットをしている時など、雑念なく物理の事に一点集中している時にマインドフルになり、精神的に満たされます。物理の内容とは直接関係のない日常の事象や個人的な主観がなるべく研究活動に影響を及ぼさないように心がけています。研究者は常にポジティブであるはずで、研究をしている中で具体的な何かがうまく行っても、逆にうまくいかないことがあっても、それに対して特別の感情を持たず、ただ淡々と自分の興味・好奇心に従って研究をしています。一方、物理学は自然界の最も根源的な問題を扱う学問分野の一つであり、宇宙開闢から物質の起源、素粒子、原子核の極微な構造、原子、分子、さらに生命体を含む多様な物質世界に至る、幅広い階層の現象を網羅します。長い年月をかけて先人たちが築いてきた物理学の知識体系の構築に寄与していることに精神的な一体感と充実感を常に持っているので、それが私にとっての研究のやりがいなのかもしれません。

今後の研究については、例えば5年後あるいは10年後に、自分がどのような研究環境にいて、その時何に興味を持っているかわからないので、現段階では具体的にはよくわかりません。ただ私自身が興味を持ち、かつ重要と信じる研究のテーマを追求し、自分のペースで自由に研究を進めるようにしているので、今後もその研究態度を貫いていくでしょう。原子核物理学は物理の他の様々な周辺分野とも関連があるので、専門領域にとどまらず、物理学全般を俯瞰する広い視野を持って研究活動に邁進したいと考えています。

原子核物理は、物理の分野の中でも比較的歴史の古い、伝統的な分野です。その一方、一般の人にはイメージがしづらい、地味な研究をしている印象があるかもしれません。サブアトミック系の極微の世界を扱う原子核物理は、自然界の基本的な原理の解明を目指す基礎物理の一つです。また核物理における様々な概念は一般の量子多体系にも共通するものが多く、原子核の構造や反応を記述するための理論的手法や、実験的手法は他分野にも幅広く応用が可能です。これはどの分野についても言えそうですが、物理学全体の中で俯瞰的に考えてみると、このような核物理の意義が見えてくると考えています。原子核には多様な側面があり、その分研究対象も多岐にわたります。研究テーマを決めたらそれを究めることも重要ですが、木を見て森を見ず、の状況に陥らないために、理論計算の手法や実験技術の詳細に過度に埋没せず、必要であれば基本に立ち返って、物理現象を観察する大局的な姿勢を大事にしたいところです。また、物理学は普遍的な学問です。専門領域に関してだけでなく、広い国際的な視野を持って研究することで、研究内容や研究者としてのキャリアだけでなく、広く人生全般において、様々な可能性が拓けます。


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