NumRoom05
図5.9 アイコナール近似に基づく反応解析 (教科書88ページ)†
概要†
原子番号 ZT, 質量数(~原子量) AT の原子核標的に、原子番号 ZP, 質量数 AP, 運動エネルギー ELAB の粒子が入射したときの弾性散乱断面積(角分布)を、アイコナール近似に基づいて計算するプログラムです。粒子間の相互作用はウッズ-サクソン型の複素ポテンシャルとします。
プログラムファイル†
ek.f (ソースファイル)
ek.cnt (入力ファイル)
csek.dat (計算結果)
ek.outlist (標準出力ファイル)
ek.exe (実行形式ファイル: Windows7/10 64bit 版用)
実行方法†
実行ファイル名を ek.exe とします。コマンドプロンプトあるいはターミナルで
ek.exe < ek.cnt
とタイプして Enter キーを押せば、入力ファイル ek.cnt の内容に従って計算が行われます。環境によっては
./ek.exe < ./ek.cnt
とします。正常に終了したら、0 あるいは stop 0 とターミナルに表示されます。
入力ファイルの説明†
- L1-L6
第2章で紹介した rscat.cnt と同様です。 - L7 AP, ZP, AT, ZTを、それぞれ 10桁の F 型実数で指定します。ZP と ZT は、標準出力ファイル中での反応系の表示にのみ使用されます。
- L8
ELAB (単位: MeV), RMAX (単位: fm), DR (単位: fm)を、それぞれ 10桁の F 型実数で指定します。RMAX は、ポテンシャルが無視できるとみなせる粒子間距離です。DR は、歪曲関数を計算する際の z 積分の刻みとして用いられます。 - L9
衝突径数 b について、その最小値 BMIN, 最大値 BMAX, 刻み DB をそれぞれ 10桁の F 型実数で指定します。単位は全て fm です。 - L10
第6章で導入する重心補正(ICM)と相対論的補正(IREL)のコントロールです。0 で off, 0以外で on とします。 - L11-13
ウッズ-サクソンポテンシャルの 9つのパラメータを 10桁の F 型実数で指定します。パラメータの意味(ポテンシャルの定義)については、以下のファイルに纏めています。
ウッズ-サクソンポテンシャルの定義 (このノートは必ず確認してください)
- L14以降
第2章で紹介した rscat.cnt と同様です。
出力の説明†
ek.outlist†
標準出力ファイルです。入力値の他に以下の結果が出力されます。
- 波数 K (単位: 1/fm), hbar*v の値(単位: MeV・fm)
- b ごとのアイコナール S 行列の値
- 第6章で紹介する全反応断面積, 全弾性散乱断面積, 全断面積の値(単位は全て mb)
ek.dat†
左が散乱角 θ (単位: degree) で、右が微分断面積 dσ/dΩ (単位: mb/sr) です。
注意点と補足†
- ZP*ZT が有限値であっても、クーロン相互作用は考慮されません(このとき標準出力に注意書きが出ます)。
- 教科書で使用したポテンシャルのパラメータは以下のとおりです(単位はポテンシャルの深さが MeV, それ以外は fm)。
V0 R_V0 a_V W0 R_W0 a_W WD R_D0 a_D 12C: 50.17 1.09 0.57 15.73 1.09 0.50 5.33 1.09 0.50 40Ca: 40.55 1.17 0.75 10.73 1.26 0.58 --- --- --- 208Pb: 29.96 1.24 0.647 9.21 1.24 0.647 --- --- ---
- プログラムに組み込まれている 0次の第1種ベッセル関数の計算ルーチン BESSJ0 は、文献 [a1] および [a2] を参考にして作成しました。
- 原子番号(と質量数)を元素記号に換算するサブルーチン ELEMNT は井芹康統氏 (千葉経済短大) に提供していただきました。
発展課題†
- 入力パラメータを変更し、図5.9 にプロットされている破線と点線の結果を算出してください。実験データもあわせてプロットし、計算結果と比較しましょう。
- 標準出力ファイルに書き出されている S 行列を図5.8(b)のようにプロットしてみましょう。12C および 208Pb 標的の場合についても、同様のプロットを作成してください。40Ca 標的のとき、ポテンシャルの実部の符号を逆転させると S 行列の振る舞いはどのように変化しますか?
- プログラム内で計算されている波動関数を出力することで、図5.4と図5.5を再現してください。12C および 208Pb 標的の場合についても、同様のプロットを作成してみましょう。
- 第4章の発展課題で作成した、ウッズ-サクソン型密度分布を仮定した平面波近似計算を実行するプログラムを用いて、図5.10の結果を再現してみましょう。
以下は余裕があれば取り組んでみてください。
- 図5.6を再現してください。式(5.43), (5.44)をプロットすることになります。
- 図5.11を再現してください。前方散乱近似を使用しない場合、断面積の計算時にも、z に関する積分を数値的に行う必要があります。
参考文献†
[a1] W. H. Press, W. T. Vetterling, S. A. Teukolsky, and B. P. Flannery, Numerical Recipes 3rd Edition:
The Art of Scientific Computing (Cambridge University Press, 2007).
[a2] J. F. Hart, Computer Approximations (Krieger Pub Co, 1978).