SPADI-A Wiki/WG1/TF3.1


WG1

# 報告 : TPC 読み出し回路 仕様検討TF(short term 開発基板)

文責:** A・B

日付:** 2022-11-30

## 1. 経緯

この Task Force (TF) に参加した実験グループは、 LEPS2 solenoid、RIビーム散乱用、SPiRIT、J-PARC HypTPC、CAT Collaboration、ELPH KNscattering測定(仮)、J-PARC E16&E88、MAIKo の8グループであった。

このうち J-PARC E16&E88 は TPC ではなく GEM tracker や HBD の読み出しを目的としており、その他は TPC 読み出し回路の開発が目的であった。 いずれの実験もガス検出器を使用しており、検出器に直接接続する高集積度・高速読み出しの回路の開発を必要としている。 開発仕様の共通点を見出し、基板機能の仕様を策定することがこの TF の目標である。

TPC の読み出し回路として **AGET** を用いたシステムが SPiRIT や J-PARC HypTPC で使われてきたが、開発が終了し代替基板が必要である。 J-PARC E16&E88 グループも早急に読み出し回路を必要としているため、既存の ASIC チップを用いて数年以内に回路開発を行う必要性を確認した。

一方、次世代の ASIC チップを日本国内で開発することも重要であり、本 TF では既存 ASIC を用いた短期開発(short term)と新規 ASIC 開発を視野に入れた長期開発(long term)の2つに目標を分けることを合意した。 short term 開発での議論を踏まえ、long term 開発の基板仕様決定を行うこととした。

short term 開発については、

7月28日、8月8日、8月29日、9月9日、9月15日、10月3日、10月25日、11月2日**

の8回のオンラインミーティングで議論を行った。 このうち9月9日は、候補 ASIC である **SAMPA** を BNL sPHENIX 実験で実際に使用している坂口貴男氏に講演を依頼した。

本報告書では、short term 開発基板の **ハードウェア** および **FPGA 機能仕様** についてまとめる。

## 2. 基板機能の仕様(ハードウェアと I/O)

### 概要

TPC読み出し回路の機能仕様(ハードウェアとIO)**

項目内容
------------
ボードサイズ75 mm × 150 (+α) mm × 13.4 mm (SFP厚程度)
備考光ファイバー直線部分に合わせて +α 伸ばす。切り欠き形状。電源部分は別基板 (J-PARC E16 放射線耐性)。
ASIC chipSAMPA V4
チャンネル数/ボード128 ch(放電保護回路を基板上に実装)
検出器信号入力コネクタSAMTEC SEAF-30-01-L-06-1-RA-K-TR または 0.5 mm pitch
データリンクSFP+ ×2(高速SerDes×1、汎用IO×1)
通信規格TCP
トリガーIFLVDS(40 MHz の倍数?)
トリガー生成用データパス有(SAMPA 1 chip あたり 1–2 ch)
データリンク速度約1–1.25 Gbps 程度
汎用IOLVDS, 入出力合計16 ch, 34PIN ハーフピッチ
消費電力約10 W/ボード
冷却方法E16:水冷、その他:空冷
放射線耐性$10^{10}$–$10^{12}$ n/cm², 約kGy(J-PARC E16)
運用形態E16:トリガーレス対応、他:トリガー型
L1トリガー遅延約9.6 µs (=192 samples @ 20 Msps)
BUSY 長100 µs より小
トリガーレス時最大13 Gbps(128 ch)・圧縮で半減予定

基板サイズは J-PARC E16 実験の設置スペース制約より 75 × 150 mm 以下とし、電源部は交換可能な別基板とする。 入力コネクタは高密度実装のため、sPHENIX の SAMPA FEE で使用される **SAMTEC SEAF** または RD51 Hybrid Card (VMM3) で使用される **HIROSE FX10A-140S14-SV** を想定。 各グループは検出器に合わせ変換基板を用意する。

## 3. FPGA 機能仕様

### 3.1 SAMPA アナログフロント部

整形時間 (ns)ゲイン (mV/fC)電荷測定範囲 (fC)
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1603067
16020100
3004500

4チップで構成されるSAMPAの設定(極性・整形時間・ゲイン)は共通とする。 極性はジャンパピンまたはスイッチで選択、ゲイン・整形時間はFPGA制御を想定。 SAMPA内蔵I²Cレジスタは任意の read/write が可能。

### 3.2 SAMPAの動作モード

モードトリガー連続読み出し5 Msps10 Msps20 Msps入出力遅延
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DSP長い ($>$time window)
DAS(FPGA対応)×短い (100–200 ns)

FPGAではDSP・DAS両モードに対応するため、SAMPA 1 chip の 11 Elink × 4 = 44 link を全て接続する。 リソースが足りない場合は別ファームウェアで対応。

#### DSP mode 外部または内部周期トリガーで動作し、波形処理をSAMPA内で実行。 time window長は10bitレジスタ`TWLEN[9:0]`で設定可能。 20 Msps動作時に使用。

#### DAS mode ADCデータを直接出力。外部トリガ生成やFPGA/GPU信号処理に適す。

### 3.3 設計上の検討事項まとめ

### 3.4 FPGA User IO 要求

用途規格ピン数概要
-------------------------
SAMPA Elink関連SLVS11×2×4=88
hb_trg / trg / bx_sync_trgSLVS各×2×4
clkSOinSLVS1×2×4=8
I2C / POL / CTS / CGLVCMOS 1.2 V約15 pins
clk_configLVCMOS 1.2 V7
汎用I/OLVDS16×2=32
SFP+制御LVCMOS 3.3 VI²C, LED 各×2
MIKUMARI IFLVDSTX/RX 各×2
Flash/EEPROMLVCMOS各4本前後
合計差動144, シングル46

### 3.5 FPGA候補デバイス

SLVS対応・10 GbE SerDes搭載FPGAとして以下を検討:

VendorFamily10 GSLVS TXSLVS RX備考
---------------------------------------------------
AMD-XilinxArtix Ultrascale+LVDS/DIFF_HSTL候補主力
AMD-XilinxKintex-7−2 FFLVDSPPDS(VCIM = 200 mV)高価
IntelCyclone 10GXLVDS/DIFF_HSTLLVDS (<700 Mbps)
LatticeCertusPro-NX−9IO数が少ない
MicrochipPolarFire耐放射線 1 kGy 級

Efinix Titanium は当時(2022 年11 月)高速 SerDes 未実装のため除外。

## 4. まとめ

本報告では、TF で議論された短期開発用 TPC 読み出し基板の **ハードウェア仕様** および **FPGA機能仕様** を整理した。 次のステップとして、電源系・JTAG拡張・ファームウェア設計(1 GbE→10 GbE対応)を含む具体的な設計作業を進める予定である。