ここでは、AMANEQ を実際に利用する上で知っておくべき注意点などを説明する。AMANEQ の概要などについては、AMANEQ User Guide を参照のこと。
AMANEQ は 1 つのボードに主 mezzanine slot 2 つを持ち、ここに異なる種類の mezzanine card を装着することで、異なる測定に対応する。1 つの実験において 1 枚、もしくは複数の AMANEQ board を利用可能である。1枚で運用する場合、AMANEQ は stand alone mode で運用し、複数の AMANEQ board を使用する場合、board 間の時刻同期と通信のため、時刻同期・通信技術である MIKUMARIシステムを用いる。Mezzanine card はLow Resolution TDC (LR-TDC) 用と High Resolution TDC (HR-TDC) 用があり、この mezzanine card と FPGA の Firmware を切り替えることで、streaming LR-TDC (Str-LRTDC) または streaming HR-TDC (Str-HRTDC) として利用可能である。Str-LRTDC を用いる場合、mezzanine card を全く挿さない状態でも問題ないが、Str-HRTDC firmware の場合、最低 1 枚は HR-TDC mezzanine card を装着しないと正しく動作しない。Streaming TDC はTOT 情報を連続読み出しも行う。データの読み出しには SiTCP または SiTCP-XG が FPGA のデータリンクとして使われている。
これまでに開発された AMANEQ board の version は 3 種類あり、version 1 (GND型番: GN-2006-1)、version 2 (GND型番: GN-2006-2)、version 4 (GND型番: GN-2006-4) が存在する。Version 2 は特定のグループが購入したものであり、このマニュアルでは解説しない。Version 1 では board 前面に Belle2 trigger compatible の RJ45 ポートがついているが、バージョン 4 ではこれが廃止され、代わりに MIKUMARI Link 用の SFP ポートが追加された。そのため、version 1 では、AMANEQ board の小mezzanine slot に MIKUMARI Link 用の SFP port 用小 mezzanine card を取り付け、これを用いて MIKUMARI Link 通信を行っていたが、version 4 ではこの小 mezzanine card を取り付ける必要はなくなり、AMANEQ onboardの SFP port を用いて MIKUMARI Link 通信を行う。AMANEQ の FPGA firmware は v1 と v4 でそれぞれ異なるものを書き込む必要がある。AMANEQ 用の firmware (Str-LRTDC, Str-HRTDC, MIKUMARI Clock Root, MIKUMARI Clock Hub) はすべて v1 用と v4 用が用意されている。
Str-LRTDCとStr-HRTDCのセットアップと運用には異なる部分があるので注意されたい。さらに、時刻同期のためのfirmwareには MIKUMARI Clock RootとClock Hub が存在するが、Clock Root firmwareはversion 2.7を最後に更新がストップすることが決まっているので、Clock Hub firmwareへの置き換えが推奨される。以下、相違点を挙げる。
Firmwareの種類 | Str-LRTDC | Str-HRTDC | MIKUMARI Clock Root | MIKUMARI Clock Hub |
ネットワークプロセッサ | SiTCP | SiTCP-XG | SiTCP | SiTCP |
利用されるデータ通信規格 | 1 GbE | 10 GbE | 1 GbE | 1 GbE |
装着する光モジュールの規格 (SFP1スロット) | SFP | SFP+ | SFP | SFP |
Default IP アドレス | 192.168.10.16 | 192.168.10.10 | 192.168.10.16 | 192.168.10.16 |
対応メザニンカード | HUL MEZZANINE DCRV2 基板 (GN-1626-1) | HUL MEZZANINE HR-TDC 基板 (GN-1644-1) | Clock-Data Distributer Optical (CDD-OPT) v3 (GN-2436-3) | Clock-Data Distributer Optical (CDD-OPT) v3 (GN-2436-1) |
Number of input channels (KEL connector) | 64 channels (no mezzanine) 96 channels (one mezzanine) 128 channels (two mezzanines) | 32 channels (one mezzanine) 64 channels (two mezzanines) | 64 channels | 64 channels |
ボード本体の入力信号規格 | LVDS, ECL, PECL, LVPECL | 利用不可 | LVDS, ECL, PECL, LVPECL | LVDS, ECL, PECL, LVPECL |
メザニンカードの入力信号規格 | LVDS, ECL, PECL, LVPECL | LVDS | MIKUMARI で利用 | MIKUMARIで利用 |
LSB の時間 | 1 ns | ~1 ps | LR-TDC に準じる | LR-TDC に準じる |
Stand alone mode | 対応している | 対応している | 対応している | 対応している |
AMANEQ のデータ通信用の光モジュールを選定する場合、Str-LRTDC と Str-HRTDC で用意するものが異なる。すなわち、光モジュールとして Str-LRTDC では 1 Gbps の SFP モジュールを選定し、Str-HRTDC では 10 Gbps の SFP+ モジュールを選定する。これは、利用しているネットワークプロセッサがそれぞれ SiTCP と SiTCP-XG と異るからである。光モジュールは速度固定のものを用いる。例えば、AMANEQ に Str-LRTDC のファームウェアを入れた際に、10/100/1000 Mbps のオートネゴシエーション機能搭載の SFP to RJ45 モジュール (10Gtek 10/100/1000Base-T オートネゴシエーション SFP to RJ45, https://amzn.asia/d/4kJwJq9) をデータ通信用に利用しようとしたが、通信できなかった。一方 1000 Mbps 速度固定の SFP to RJ45 モジュール (10Gtek 製 https://amzn.asia/d/4HVDD22) は問題なく利用できた。 MAC アドレスをデフォルトから変更したい場合は、Bee Beans Technology から SiTCP のライセンスのライセンスを購入する必要がある。一方で、閉じたネットワーク内で、デフォルトの MAC アドレスを利用できるのであれば、SiTCPのライセンス購入をしなくても利用することはできる。MACアドレスおよびIP アドレスの設定については、
AMANEQ の MIKUMARI Link用の光モジュールを選定する場合、1 Gbps の SFP モジュールを選定する必要がある。SFP+ モジュールでも動く可能性はあるが、検証されていない。また、MIKUMARI 用のラインは、独自のプロトコルで高精度の時刻同期を実現しているため、SFP - RJ45 変換などを噛ませ、メタル線で接続してもうまく動作しないと考えられ、光ファイバーケーブルを用いる必要がある。
AMANEQ の各ファームウェアの詳細、レジスタ設定について、さらに AMANEQ が送り出すデータフォーマットについては、AMANEQ User Guide を参照のこと。
2024/10/18 小林 信之 (大阪大学RCNP)