そもそも「著作権」とは何か


なぜ「著作権」か?

そもそも、著作権とは、法律に定義された法律上の「権利」です。 ではなぜ、そんな法律を気にしなければいけないか。それは、インターネット 時代になって、例えばホームページを作るだけで、本人が気がつかない内に 「著作権」が発生しているからです。あるいは逆に、それに気がつかないで いると、思わぬ法律問題に巻き込まれることもあり得ます。

例えば、ある業者が、ある企業のホームページに素敵な写真を見つけて、 それを取り込んで自分の会社のホームページに使い、売上を伸ばした としましょう。その場合、その業者は訴えられ、損害賠償を請求される 可能性もあります(実際の判例については、例えば 「判例分類:著作権侵害に関する判例 103件」を参照してください)。

また、いわゆる「著作権法」とは、印刷技術の普及に伴って生まれた法律です。 ですから逆に、デジタルネットワークが普及しつつある現代社会にあってこそ、 この法律がなぜ、どのようにして、立法されたのかを振り返っておくことに 意味があるかもしれません。

そこでこのページでは、著作権とはそもそもどういう権利なのか? なぜ、そんな権利が存在しなければならないのか? 現状では、 著作権法はどうなっているのか? といった問題について、簡単に 説明します。


「著作権」とはどういうものか

いわゆる「著作権」とは、著作者人格権、複製権、放送/有線送信権、 展示権、翻訳/翻案権などを総称したものです。 その簡略な説明は例えば、 朝日新聞社のもの日本経済新聞社のもの中日新聞のもの などが参考になるでしょう。

「著作権」とは、法律的には それを創作した(それを書いた)本人が意識すると否とにかかわらず、 「書いた瞬間からそれに著作権が発生する」、と考えます。このような権利を 「自然権」と呼びます。例えば、著作権とよく似た「権利」(知的所有権) を定める法律として、特許法とか意匠法というものがあります。 特許法や意匠法で定められる知的所有権は, 特許庁に登録しないと権利が発生しません。 しかしながら著作権は,誰も何もしなくても (誰かが何かを書いただけで)、その著作者の創作物に著作権が(自然に) 発生する、と考えます。

著作権法の精神の基本は、次に引用する「世界人権宣言」 (1948年12月10日、国連総会採択)第27条1項、2項 によく表現されています:

すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、 及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。

すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から 生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。

すなわち著作権法の精神の基本とは、社会の文化の全体的発展を目的とし、 創作を行なう著作者の権利を保護することによって 創作者の incentive (創作意欲の奨励)を尊重しつつ、 同時にその「作品」が出来るだけ広く「活用」 されることによって社会文化の発展をはかるには、 (即ち、その矛盾する要請に対して) どうしたら最もいいのか、という工夫やルールを社会的に決めていく、 という点にあります。

従って時代とともに、またメディアによっても、 著作権の考え方や扱いは変わるでしょう。WWW(ホームページ) では、本人があまり意図することが なくても著作者になったり、他人の著作物を引用することになってしまいます。 従って、いままで著作権とは無縁だった一般人にとっても、 「著作権」やそれに伴う責任について理解しておく必要が出てきました。

「私的使用のための複製」及び「引用」の範囲とは何か、については、 上記の朝日新聞社による説明の中に、その簡略な説明が出ていますので、参考にしてください。

関連サイトとしては、まず文部省の下にある 文化庁の関連ページ、 通産省の外郭団体である ニューメディア開発協会の 電子ネットワーク協議会のページなどがあります。 また関連リンク集としては、例えば 東北大学法学部による 「知的財産権法プロジェクト: 知的財産権法及びインターネットと法に関する情報」 における 日本の知的財産権法のリンクがあります。 特に、 「著作権について次の問いのようなことを知っておきましょう」 「はじめての著作権講座 I -著作権って何?-」の「Q&A」、 および、 「はじめての著作権講座 II -市町村のしごとと著作権-」の「Q&A」は、 分かりやすいです。 社団法人著作権情報センターによる 「著作権関係法令集データベース」 には、詳細に亙る情報がよく整理されています。


1998年1月1日に改正された(新)著作権法(「デジタル著作物」保護の強化)

著作物は本来、国際的に流通するものです。従って国際条約によって著作権法 の内容が規定され、それを各国が採択することによって条約関係を結び、 これにより相互の著作物を保護しあう義務が発生します(1886年のベルヌ条約、 1952年の万国著作権条約など)。しかし、デジタルネットワーク上の 著作権の取り扱いについては国によってばらつきがあったため、国際的に その統一をはかる必要が出てきました。

そこで1996年12月、国連機関の一つである 世界知的財産権機関(WIPO) の主催によりジュネーブで 「著作権・著作隣接権問題外交会議」が開催され、新しい WIPO著作権条約が採択されました。 これによって、ネットワーク上をデジタル信号で流通する、いわゆる デジタル著作物の著作権保護範囲が、大幅に認められることに (利用者にとっては制限条件が明確に) なりました(これは1971年のベルヌ条約改正以来の大幅改編と なっています)。そしてこのWIPO新条約に呼応して 1997年 日本でも著作権法の一部改正案が国会で可決され、1998年1月1日より 施行されました。これが 現行の「(新)著作権法」です。

このような変化は、例えば実際に、 日本新聞協会 編集委員会が1997年(平成9年)11月に発表した 「ネットワーク上の著作権について――新聞・通信社が発信する情報を ご利用のみなさまに」と題する見解が、利用者にとって 大変きびしい内容になっていることにも反映していると思われます。

具体的な改正のポイントの一つは、ネットワークを通した 「有線送信」の概念を改正前より明確に規定したことです。即ち、 サーバーをネットワークに接続し 利用可能にした段階でも、著作権法上の保護対象となります。 これはWIPO著作権条約 では、データベース等に蓄積する権利(第5条〔データの編集物〕)、 サーバーをネットに接続する権利(第8条〔公衆への伝達権〕)、 インタラクティブに送信する権利、などに対応しています。 日本の (新)著作権法の条文で言うと、第二章(著作者の権利)、 第三款(著作権に含まれる権利の種類)、第23条(公衆送信権等)、 「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆 送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行なう権利を専有する」 に対応しています。

すなわちこれまでは、著作権侵害の主張においては、 実際に送信されたかどうかが問われましたが、 今回の改正ではサーバーに接続して公衆に利用可能な 状態に置いただけで、著作権法上の保護対象となっています。 また、「公衆送信」とは、 「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信 又は有線電気通信の送信」と定義され、構内でのLAN送信まで含まれることになり ました。

これは、例えばこういうことです。 電子メールで得た情報を他の人にも伝えたいと思い、 そのメールを無断で自分のホームページに載せると、これは、その段階で 著作権法上の「複製」に該当します。 即ちホームページが不特定多数が閲覧できる公衆送信である以上、 置いただけで、著作権の侵害になります。 権利侵害を受けた著作者(この例の場合、電子メールを出した人) は、必要に応してプロバイダーや管理者に、 削除の請求を行なうことができます(もちろんあとで了解を得られる 場合も多いでしょうが、原理的には問題になりうるので、注意が必要と いうことです)。 あるいは別の例で言えば、例えばある新聞記事が重要であると 思った人が、その記事を、新聞社に無断で自分のホームページに載せ ると(あるいはメーリングリストに流すだけでも)、 たとえ後で新聞社に連絡をとったとしても修正や削除、 あるいは利用料金を請求されることが実際にあります。

逆に、無用なトラブルを避けて「楽しく」暮らす ためには、事前にひとこと了解をとっておくことだけでいいという ことにもなります。 これは、利用者にとっては ネットワーク上のエチケット の一つと考えることも出来るでしょう。

しかし、インターネットの利用者として どういう場合に了解をとった方がいいか、ということは、 誰もがよく理解しておくことが必要です。

また、評論家による様々な議論、例えば 現行の法解釈は不必要に厳しいものであり 「「正当な引用」の範囲を広げる闘い」が必要である、などの議論 があり、その中にも関連する情報が出ていて、参考になるかもしれません。 これらは、例えば gooで"WIPO"や「著作権法」の ページ検索をしてみてください。あるいは、 関連する書籍(例えば 学術情報センター等で「著作権」の書籍検索をしてみてください。

参考書籍の例:

  1. 名和小太郎「サイバースペースの著作権 : 知的財産は守れるのか」 (中公新書、1996年)
  2. 苗村憲司, 小宮山宏之編著「マルチメディア社会の著作権」 (慶應義塾大学出版会、Keio UP選書、1997年)
  3. 藤原宏高 編著「サイバースペースと法規制」(日本経済新聞社、1997年)
  4. インターネット弁護士協議会 編著「ホームページにおける著作権問題〜 現役弁護士が答えるQ&A〜」(毎日コミュニケーションズ、1997)
  5. 山下幸夫「最前線インターネット法律問題Q&A集」(星雲社、1997年)
  6. 紀藤正樹「電脳犯罪対策虎の巻」(KKベストセラーズ、1997年)
  7. 斉藤博・半田正夫 編著「著作権判例百選(第二版)」別冊ジュリスト, NO.128 (有斐閣、1994年)
参考URLの例:
  1. 「著作権について」
  2. 「ネットワーク時代の知的所有権入門」(雑誌「INTERNET magazine」の連載記事、継続中)
  3. 著作権サポートセンター(実務情報サイト)
  4. 岡村久道「Webコンテンツと知的財産 〜著作権の概要と新しい流れについて〜
  5. 弁護士 藤本英介「ネット環境下の著作権と公正利用(フェアユース)」

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