物理研究を志す方へ

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朝永振一郎博士の文朝永振一郎博士の文には、自然科学に携わる人々の姿勢が見事に表されています。

現在ナノテクノロジー・ナノバイオロジーが脚光を浴びています。1ナノはおよそ原子10個分の長さなので、ここで私たちは、原子100個程度の「物質のコントロール」を目指していることになります。

原子としては約100種類が存在し、その原子を裏で支えているのは原子核です。原子核は陽子と中性子で出来ていて、その中でも陽子が電荷を持っていることから、原子核の中の陽子の数が原子の中の電子の数を決定し、原子の性質を決めています。さて、原子の中にいる原子核はどんな性質を持っているのでしょうか。いくつもの疑問がわいてきます。原子核はどのように作られたのだろうか?原子核は我々が自由にコントロールできるのであろうか。原子核がいまこのように存在しているのは何故なのだろうか?これらの質問に答えるのが原子核物理を研究することの目標であるといえます。

冒頭のナノテクノロジーの例と、私たちが携わる原子核物理の研究を比べてみると、興味ある事実に気づきます。ナノテクノロジーでは原子反応が主役です。一方、原子核の研究では文字通り原子核反応が主役です。原子を反応させるのに必要なエネルギーは1電子ボルト(=1つの電子を1ボルトの電位差で加速させたときに得るエネルギーであり、1eVと書く)程度であるのに対して、原子核を反応させるのに必要なエネルギーはメガ電子ボルト(MeV)の大きさになります。これらのエネルギーは温度に換算すると、原子の場合で1万度程度。これは高温ではあるものの、今の技術を持ってしてコントロール可能な領域です。ところが、原子核の場合はさらにその100万倍も高温になります。いまのところ人間の力で日常的にこのように高温の環境を作り出すことは到達不可能です。

しかし現在、我々は太陽が地球に住む生物のために核融合反応を使ってエネルギーを作り出し、そのエネルギーを供給してくれていることを知っています。それでもやはり、このエネルギーは非常に大きいので、いくら原子核を理解しても、それを十分加工することは出来ないかもしれません。この事実が、原子核や素粒子の研究者をして謙虚に自然に耳を傾ける気持にさせてくれる理由になっているのでしょう。だからこそ、自然が与えてくれる情報に対して、総合的に自然を理解する機会を与えてくれるところが魅力であると言えないでしょうか。

核物理研究センターでは、大型の実験施設とスーパーコンピュータを有し、様々な角度から素粒子・原子核を対象にしながら自然を理解するための研究を行なっています。それを支える動機の多くは、自然に謙虚に耳を傾けることから来る、不思議に思うことと、それを解決したいという欲求です。このような気持ちを持ちながら、疑問を一つ一つ解決していくことが、基礎物理学そして自然科学の大きな特徴です。


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核物理に関する入門解説を、バークレー研究所のホームページで見る ことができます。
興味のある方はこちらへ。
Nuclear Science Division -- Lawrence Berkeley National Laboratory

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