図1. ニュートリノ-原子核反応

 ニュートリノ-原子核反応(図1)は、ニュートリノ振動や超新星爆発など、原子核、素粒子、天体物理にまたがるさまざまな場面で重要な役割を果たしている。

 近年、ニュートリノ混合角θ13が従来の予想より大きな値をもつということが明らかになり、次世代のニュートリノ振動実験における大きな目標として、レプトンセクターにおけるCP対称性の破れやニュートリノ質量の階層性の決定が掲げられている。ニュートリノ振動実験では、これらニュートリノの性質は原子核標的のニュートリノ反応データから抽出されるので、MeVからGeVの広いニュートリノエネルギーの領域にわたるニュートリノ-原子核反応の、高精度な記述がますます必要となっている。

 ニュートリノ-原子核反応は、原子核へのエネルギー移行および4元運動量移行の領域(図2)によって,大きく分けて準弾性散乱(QE)、共鳴(RES)及び深非弾性散乱(DIS)の特徴的な反応機構により引き起こされる。このプロジェクトでは、これらの典型的な準弾性散乱、共鳴、深非弾性散乱領域のみならず、それらの境界領域をも含むニュートリノ反応を、統一的に記述する反応模型を構築することが目的である。

図2. ニュートリノ振動実験に関係する運動学的領域