研究紹介

核物理研究センター(RCNP)は、サブアトミック科学研究拠点として
全国・海外から広く研究者を受け入れて共同利用・共同研究を行っています。
研究を推進する重要な原動力は若い力であり、
多くのポストドクターや大学院生がシニアな研究者の指導のもとで一緒に研究しています。
このページでは、核物理研究センターが主体となって進めている研究の概要を紹介します。

サイクロトロン実験施設における研究

Cyclotron Facility

核物理

陽子と中性子が強い相互作用、電磁相互作用、弱い相互作用によって結びついて形作られた“原子核”は、原子の大きさの10万分の1よりもさらに小さな極微の物体であり、様々な量子現象が現れる量子多体系として基礎科学的に大変興味深い研究対象です。RCNPのサイクロトロン加速器では、光の速さの70%まで加速した陽子などのイオンビームが得られ、それを用いて、原子核がどのような構造や性質をもっており、どのようにして生まれてきたかを研究しています。

サイクロトロン実験

ミューオン物理

日本で唯一の連続時間構造を持つミューオンビームを使って、素粒子・原子核・化学などの基礎科学研究や非接触非破壊元素分析などの応用研究を進めます。ミューオンは電子の約200倍の質量を持つ素粒子で、物質中では重い電子または軽い陽子のように振る舞います。しかし、不安定な粒子なので研究に使用するには、まず人工的に大量のミューオンを生成する必要があります。RCNPでは世界最高の効率を持つミューオン生成装置MuSICを活用し、ミューオン科学の新しい時代を築きます。

大強度DCミューオンビームを使った研究(MuSIC)

次世代加速器BNCT開発

今日、65歳以下で10人に一人、74歳以下で5人に一人ががんに罹っていると言われています。そのがん治療には大きく分けて外科治療(手術)、薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン療法など)、放射線治療やその他(免疫療法、温熱療法など)があります。当部門は放射線を利用した治療のひとつであるホウ素中性子捕獲療法(BNCT)の研究開発を行っています。がんに集積したホウ素薬剤に外部より中性子を照射し、10B(n,α)7Li反応で発生するα線やLiイオンによってがん細胞を破壊します。

従来のBNCTで使用された原子炉からの中性子やサイクロトロンやLINACなどの加速器による中性子発生装置に比べより小型の中性子発生装置を用いた中性子発生装置によるがん治療装置の研究開発を行います。さらには治療に使用するホウ素薬剤のがんへの集積度を検査できる装置を開発するとともにより効果的にがんへ集積する薬剤の開発を行います。

レーザー電子光実験施設における研究

Laser-Electron Photon Facility

レーザー電子光実験施設ではエネルギーが非常に高く、しかも質の良い光ビームを用いてクォーク核物理学、即ちクォークとグルオンからなる量子系(これを「ハドロン」と呼びます)の構造と相互作用を研究しています。実験は、西播磨にある世界最高エネルギー(80億電子ボルト)の大型放射光施設 SPring-8 を利用して、レーザーと電子との衝突で得られるレーザー電子光ビームを用いて行い、新しい物質の存在形態である“5つのクォークからなる粒子(ペンタクオーク)”の探索を中心に研究を進めています。

レーザー電子光実験(LEPS/LEPS2)

二重ベータ崩壊実験施設における研究

Double-Beta Decay Facility

宇宙はなぜ物質(「反物質」ではなく「物質」)から成り立っているのでしょうか? この現在の「物質」優勢の宇宙を説明する重要な手掛かりが、「粒子」と「反粒子」の転換可能性(マヨラナ性)です。この転換可能性は、「粒子」と「反粒子」が転換可能である時に起こる「ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊」を観測することで検証できます。私たちは、世界最高感度のCANDLES検出器を開発し、世界でまだ観測されたことのない「ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊」を観測することを目指して研究しています。

神岡二重ベータ崩壊実験(CANDLES)

加速器研究

Accelerator

物質の根源である素粒子・原子核などの構造や反応過程などを微視的に超高分解能で解き明かすことのできる極めて高品質で高安定なイオンビームを生成・加速するための世界最高性能の加速器に関わる加速器・ビーム物理の研究を行っています。また、密接な医理連携による革新的がん治療・診断を目指した次世代加速器・照射システムの開発研究などにも挑戦しています。具体的には、サイクロトロンの高性能化、イオン源の高密度化、高温超伝導コイルを応用した次世代加速器・照射システムの開発研究を行っています。

加速器研究部

理論研究

Theory

理論研究部門では、クォークから原子核ができるフェムト世界の現象を量子色力学に基づいて探るとともに、それを基盤にした反応理論をもって宇宙の元素が出来上がる仕組みを研究しています。そのために、スーパーコンピュータを共同利用に提供し、様々な理論的手法をもって全国の研究者と共同研究を行っています。さらに実験研究との連携も強めながら、核物理研究センターのみならず理研やJ-PARC等の研究にも貢献しています。

RCNP理論部

J-PARCチャームハドロン分光研究

Charm Baryon Spectroscopy

RCNPはKEKと連携協力し、J-PARCのハドロン実験施設において大強度・高運動量分解能の高運動量二次中間子ビームを用いてチャームバリオン励起状態の生成と崩壊を調べるハドロン物理の国際共同研を推進します。重いチャームクォークを導入しハドロン内部に閉じ込められたクォークやクォーク相関を浮き彫りにしてハドロンを構成する本質的な自由度の力学を明らかにします。宇宙物質形成過程の最初の謎であるクォークからハドロンが形成される機構の解明を目指します。

J-PARCチャームハドロン研究

教育とのかかわり

核物理研究センターは、大阪大学大学院理学研究科・物理学専攻の協力講座として
博士前期(修士)課程・博士後期(博士)課程の大学院生を受け入れています。
大学院生を核物理研究センターが推進する先進的な国際共同研究に参画させることで、
高い専門性と国際性を兼ね備えた人材を育成しています。

協力講座(大学院教育)

核物理研究センターは、大阪大学大学院理学研究科・物理学専攻の講義・セミナーを通して大学院教育を行っています。

大阪大学大学院 理学研究科
大阪大学大学院 理学研究科 物理学専攻

大学院入試情報

大学院生は、理学研究科物理学専攻の院生として核物理研究センターに配属されます。大学院入試出願の際の志望配属先として、「基礎原子核物理」(核物理研究センター・豊中研究施設)、「素粒子・核反応」(核物理実験研究部門)、「加速器研究」(加速器研究部門)、「クォーク核理論」(核物理理論研究部門)の4研究グループから選択することができます。センターに所属する大学院生は、センター所属教員の指導の下で研究を行い、物理学専攻の講義を受講します。

理学研究科の入試案内
物理学専攻の入試案内

教育用マシンタイム

サイクロトロン実験施設やレーザー電子光施設においては
学内外の学部学生のための教育用マシンタイムを受け入れ、学部教育にも貢献しています。
核物理センター長は全ビームタイムのうち約10%を留め置いています。
教育用マシンタイムの要求がある場合は、実験申請書をセンター長あてに提出して下さい。
申請は随時受け付けています。

研究不正防止

核物理研究センターで研究を行う方は以下の規定および所属機関の規定にのっとり、研究不正のない環境づくりに務めて下さい。

〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘10-1

©2015 Research Center for Nuclear Physics, Osaka University