我々を取り巻く宇宙には、さまざまな物質が存在します。核物理研究センター・宇宙核物理学研究グループは、宇宙における物質生成の鍵となる原子核・素粒子反応を、地上の実験室で調べることによって、物質や宇宙の起源と、それをつかさどる素粒子の基本的な性質を探求しています。現在の主な研究テーマは以下のとおりです。
恒星の中心部で起こる核反応は、恒星のエネルギーを生み出す一方、水素やヘリウムなどの軽い元素を材料として、炭素、酸素、鉄や、さらに重い元素を作り出す役割も果たしています。我々はそれらの核反応率を実験的に測定し、その情報をもとに、星がどのような一生をたどるのか、元素がどこでどのように作られるのかを明らかにします。
宇宙に存在する元素の中には、187Re(半減期435億年)、232Th(半減期141億年)、238U(半減期45億年)など、極めて寿命の長い放射性核種も存在しています。それらの合成過程を解明することで、それらの核種を作り出した恒星の年齢を推定することができます。つまりそれらの長寿命核種を一種の“宇宙時計”として利用できるわけです。恒星の推定年齢は、銀河や宇宙の進化を解明する上でも大きな手がかりとなります。
ニュートリノの性質は、素粒子物理学の中心テーマであるとともに、ビッグバン宇宙や超新星の謎にも深く関わっています。ニュートリノが質量を持つことはスーパーカミオカンデ等の観測で明らかになりましたが、その質量の絶対値はいまだに不明です。二重ベータ崩壊測定は、ニュートリノ質量の絶対値を量る最も高感度な方法であり、二重電荷交換核反応と組み合わせることで、質量をさらに精密に求めることができます。
比較的寿命の短い原子核による原子は、まだその化学的性質が知られていないものがたくさんあります。また、自然界には存在しない原子核を核反応で生成し、化学分離してその寿命を測定することによって、超新星爆発や、星の進化、宇宙の研究が可能になります。
![]() |
![]() |
恒星におけるレニウム−オスミウム |
二重電荷交換反応による |
![]() |
|
核化学ビームコース |