核物理研究センター理論部では、サブアトミック(素粒子・原子核)世界の基礎から応用まで、幅広い研究を多岐にわたって行なっています。斬新な発想と緻密な計算を武器に、ナノよりさらに百万分の一以下という小さなミクロな世界の性質を解明することにチャレンジしています。
宇宙を構成する基本的な粒子はクォークです。クォークが集まり陽子や中性子を作る、それらが集まり元素の核位置する原子核となります。そこは日常では経験し得ない、強い相互作用に支配されたサブアトミックの世界。まだ我々が理解し得ていない謎が数多く残されています。そのうちのいくつかについて簡単に紹介します。
陽子の中にはクォークが3つ存在しますが、それを単独で見た人はいません。なぜクォークが閉じ込められるのか、量子力学の解析的な方法と、スーパーコンピュータによるシミュレーションで解明します。
いままで、4つ以上のクォークでできた粒子は見つかっていませんでした。これに対し、2002年核物理研究センターを中心とする実験グループは、5つのクォークから成る粒子の存在を示すと思われるデータを、世界で初めてとることに成功しました。その不思議な性質の理論的な解明にあたります。
自然法則には対称性があります。しかし、何らかの理由で対称性が破れると、粒子に質量が生まれ、同時に世界に多様性が作られます。対称性の破れの機構とその詳しい帰結について、量子力学の方法を駆使してせまります。
湯川博士の予言したパイ中間子は、原子核を作る糊の役割をしています。しかしその力にはまだ理解されていない点が多くあります。従来の核物理の手法よりさらにミクロな視点にたって、新しい理論的な手法を構築します。
100余りの元素以外に、寿命の短い、多くの不安定原子核の存在が知られています。未知の原子核を予言しその特異な性質を知ることで、原子核の性質を深く理解するとともに、星の内部でおこる核反応を理論的に明らかにし、元素合成の問題にせまります。
宇宙初期にそうであったと予想されるような高温・高密度下では、物質はクォーク物質に代わると考えられています。地球上には存在しないクォーク物質の謎に理論でせまります。