アイコナール近似
- アイコナール近似 (eikonal approximation) について書く。
準備
- シュレディンガー方程式は
- である。平面波(規格化はされてない?規格化したい場合、下記ノート参照。)
- を用いて
- と書き、これをシュレディンガー方程式に代入すると
となる。下記の計算ノートを参考にナブラ演算子の部分を計算し、両辺を
で割れば、
- となる。
- を用いれば、
- と書ける。
- を用いれば、
とも書ける。
が z 軸方向を向いていた場合、
- を用いて
- とも書ける。この式は鈴木宜之さん, ”中高エネルギー不安定核原子核反応におけるグラウバー理論”, JPS63(2008)419 の式 (2) に相当する。
アイコナール近似
- アイコナール近似は上の式で
- とする近似である。他の 2 項に比べてこの項が小さいとする。これが何を無視したことに相当するのかは緒方さんや鈴木さんの講義資料を見る。この近似を用いると、解くべきシュレディンガー方程式は
となり、これをアイコナール方程式と呼ぶ(緒方さんの講義資料)。z 軸対称性を仮定し、円筒座標
を用いれば、
- と書ける。
アイコナール波動関数
- アイコナール方程式を積分すれば、
- となる。反応の初期条件
- すなわち遠方で平面波に漸近することより
- である必要がある。これより、
- と書くことができる。これを元の波動関数に代入すれば、
- となり、これをアイコナール波動関数と呼ぶ。
- 参考 : 鈴木さん、緒方さん講義資料(ただし、緒方さんの講義資料と規格化因子が違う。)
アイコナール近似の散乱振幅
- 散乱の一般論より散乱振幅は
- であるから、これにアイコナール波動関数を代入すると
となる。ここで運動量移行を
とし、散乱角 θ が小さく
とすると、
- となる。これを用いると
- となる。ここで、
- であるから、これを代入すると
ここで、χ(b) を phase-shift function と呼び、
- である。また、運動量移行の大きさと散乱角度の関係は
- となる。さらに球対称ポテンシャルなので、角度積分を実行すると
- となる。(後で鈴木さんの講義資料から計算過程を書き写す。)
アイコナール近似を用いたときの中性子散乱
上のようなウッズ - サクソン型の複素ポテンシャルを用いて、中性子の入射エネルギーが 100 MeV のときの角度微分散乱断面積
を計算すると下図のようになる。
計算に使った ROOT ファイルは eikonal_neutron.C である。 1 b = 100 fm2 という関係も使った。この図は鈴木宜之さん, ”中高エネルギー不安定核原子核反応におけるグラウバー理論”, JPS63(2008)419 の図 1 の右図の eikonal 計算の結果を再現しているように見える。
計算メモ
1 次元自由粒子の規格化
- 1 次元の自由粒子の波動関数の規格化条件は以下の式を用いる。
- この式から平面波の規格化因子を求める。以下の平面波
- を代入すると
となる。デルタ関数のフーリエ積分表示(参考: EMANの物理学-超関数のフーリエ変換, NIST - DLMF - Integral and Series Representations of the Dirac Delta)
- より
となる。規格化条件の式より A > 0 とすれば
- となる。また規格化された平面波は
- となる。
3 次元自由粒子の規格化
- 規格化条件の式は
である。ベクトルが変数のデルタ関数は二行目の式が定義らしい(?)(EMANの物理学 - デルタ関数)。この式から平面波の規格化因子を求める。以下の平面波
- を代入すると
となる。デルタ関数のフーリエ積分表示(参考: EMANの物理学-超関数のフーリエ変換, NIST - DLMF - Integral and Series Representations of the Dirac Delta)
- より
となる。規格化条件の式より A > 0 とすれば
- となる。また規格化された平面波は
- となる。
平面波の勾配
- 直交座標で計算するのが楽そう。