j-j結合(球形)殻模型
- Mayer と Jensen は中心力ポテンシャルにスピン・軌道相互作用を導入し、魔法数といった核構造を説明した。以下ではこの相互作用を採用した動径方向のシュレディンガー方程式を解き、一粒子軌道を求める。
- 動径方向のシュレディンガー方程式は
- となる。計算を簡単にするため、通常は
- と置き
を解く。一般的なテキストでは、上記の
をそれぞれ
と書くことが多い。ここでは浜本さんの書き方に合わせるため、シュレディンガー方程式の解に
をかけたものを
とした。ポテンシャルの部分は浜本さんの2004年の論文 (PRC69(2004)041306(R)) に従い
とする。ここで
は半径
, diffuseness
, 深さ
のウッズサクソンポテンシャルである。
はスピン・軌道相互作用のポテンシャルであり、
はそれぞれ reduced Compton wavelength, 換算質量, スピン・軌道相互作用の強さを表す。
はそれぞれ一粒子軌道の全角運動量, 軌道角運動量, スピンの大きさを表す。例えばp3/2 軌道の場合、
であり、
となる。
浜本さんからもらったコードでは、このポテンシャルを採用し、Störmer method (参考: Encyclopedia of Mathematics - Störmer method) を用いてシュレディンガー方程式を数値的に解いている。シュレディンガー方程式を解くと言っても、単に 2 階の常微分方程式を微小区間で区切って和分を計算していくだけなので、数値計算のテキストを参考にすれば割と簡単に計算できる。Runge-Kutta 法でも十分である。(波動関数の境界条件(接続条件?)を満たすためのループ処理がすこし面倒。)テキストは早野・高橋 計算物理 (共立出版)や Numerical Recipes in C (Cambridge University Press) (日本語版: C言語による数値計算のレシピ) が参考になりそう。Numerical Recipes の Second Edition (英語版) は Numerical Recipes Home Page で無料で公開されている。
計算結果
31Ne
浜本さんの 2010 年 の 31Ne 論文 (PRC81(2010)021304) を参考に、 2p3/2 の軌道の束縛エネルギーが -300 keV となるように
を決定し、以下のパラメータを用いて中性子の一粒子軌道を計算した。
- 計算結果は以下のようになる。
ROOT 用ファイル : plot_ws_levels_ne31.C (libMathMore ライブラリをロードして ACLiC でコンパイルして実行)
66Ti
浜本さんの 2012 年の論文 (PRC85(2012)064329) で計算している 66Ti の中性子の一粒子軌道を球形の場合で計算した。
ROOT 用ファイル : plot_ws_levels_ti66.C (libMathMore ライブラリをロードして ACLiC でコンパイルして実行)
計算では浜本さんの論文の β = 0 における束縛した one-particle energy (-8.82, -5.54, -3.99, -3.94, and -0.48 MeV for the 1f7/2, 2p3/2, 2p1/2, 1f5/2, and 1g9/2 levels) を再現している。
208Pb
浜本さんが使っている一般的なパラメータを用いて、208Pb の中性子の一粒子軌道を計算すると以下のようになる。
は A. Bohr and B. R. Mottelson, Nuclear Structure (Benjamin, Reading, MA, 1969), Vol. I. p. 239 の式を用いた (PRC85(2012)064329 でも使っている)。
ROOT 用ファイル : plot_ws_levels_pb208.C (libMathMore ライブラリをロードして ACLiC でコンパイルして実行)