Cl
Ar の遷移では、ガモフ・テラー(GT)遷移の
遷移強度
(GT)は太陽ニュートリノの研究と関連して注目されてきた。
原子核の荷電対称性を仮定すると、
Cl
Ar と
Ca
K の遷移強度
(GT)は等しくなるはずである。
しかし、
Cl(
)
Ar実験 [6,7]と
Ca (
)
Kの測定 [8,9]
による
(GT)の分布は、クーロン力による荷電対称性の破れを考慮
しても説明のつかない大きな食い違いがあった。(
)反応では
前項で述べた
(GT)と散乱断面積の比例関係が使われている [3]。
この性質が
殻間の遷移では成り立っていないという報告がある[10]。
Cl(
He,
)
Ar反応に対し、DWBA計算を行った。
一粒子空孔状態の配位には(
)と
(
)の2種類を仮定した。計算された
両者の角度分布を比べてみると、同じ
の遷移であっても
差が現れることが分かった。この違いを利用すれば、それぞれの
ガモフ・テラー遷移を配位の違いで分類し、異なった比例係数で
(GT)を求められる可能性が出てくる。
我々は大阪大学RCNPにおいて、Cl(
He,
)
Arを
0
と4
で測定した。標的は高分解能実験用に
新しく開発した
の薄膜を使った
[11]。この事は次の章で述べる。さらに分散整合
技術を用い [5]、中間エネルギーの荷電交換反応としては
世界最高分解能の25 keVを達成した。GT状態が
MeV
までほぼ完全に分かれて観測された。その結果、同じ
の遷移であるにも関わらず、角度分布に違いが見られた。この差は
配位の違いによるものと考えられる。
今後は角度分布の測定範囲を広げてArのGT状態の配位を個々に推定し、
(GT)のより適切な導出を行いたい。
これらはニュートリノの物理や原子核荷電対称性の問題に貢献するものと
期待される。