阪大発の革新的ミューオン技術

MuSICのミューオン生成手法は世界的広がりを見せています。

2017年

3月:天保小判と希少岩石のミューオン非破壊元素分析に成功

負電荷ミューオンを使用すると非破壊非接触で物質内部の元素を分析することができます。ビームラインの設定によりミューオンのエネルギーを制御することで、物質中でミューオンを止める深さを選ぶことができます。つまり、任意の深さ位置の元素分析が可能です。また、ミューオンが放出する特性X線は電子の特性X線に比べて約200倍高いエネルギーを持つので、電子では不可能な物質深部の測定や原子番号の小さい元素分析も可能です。この度、大強度化されたミューオンビームを使用して、天保小判と希少岩石のミューオン非破壊元素分析を試測定行いました。各元素の存在を示すピークが短時間で観測され、連続時間構造ミューオンビームでミューオン非破壊元素分析がMuSICにおいて高効率高精度高品質で実施できることを実証する非常に良いデータとなりました。今後は、貴重な考古学資料など様々な非破壊元素分析がMuSICで実施されていくでしょう。


2月:ミューオン核変換の詳細実験に成功

2016年5月に行われた実験に続き、前回よりも約55倍の量に増強されたミューオンビームを使用して、ミューオン核変換の詳細実験が理研・東大を中心とする実験グループにより実施されました。新しく建設されたミューオン核変換測定装置SeaMINEにより、ミューオン核変換により放出される中性子やγ線などの情報が詳細に測定されました。


2月:冷却試料によるµSR測定に成功

正電荷ミューオンが物質中に停止すると、物質中の局所磁場を感じて棒磁石のように回転します。この回転の様子を調べることにより、物質中の磁場の状態を調べることが可能です。この測定手法をミューオンスピン回転(µSR:Muon Spin Rotation)法と呼びます。これの測定方法を使用することで、高温超伝導材などの物性研究を進めることができます。この度、MuSIC-M1において、調べる試料を4Kまで冷却したµSR測定に初めて成功しました。µSR測定についても共同利用実験を早急に開始できるように開発グループで準備を進めています。


2月:大強度ミューオンビーム運転を開始

大強度ミューオンビームでの定格運転を開始しました。サイクロトロン加速器から供給される432Wの定格パワー陽子ビームを使用することで、今までの約55倍にミューオン量を増やすことに成功しました。これによりMuSIC-M1ビームラインの設計性能が達成され、MuSIC-M1ビームラインが本格稼働が開始しました。今後、日本唯一の連続時間構造ミューオンビームを活用する様々な基礎研究・応用研究が実施されて行きます。


2016年

5月:ミューオン核変換の基礎データ収集実験に成功

負電荷ミューオンが原子核に捕獲されると、ミューオン原子捕獲反応により原子核の原子番号を一つ小さくなります。つまり、ミューオンにより原子核を違う原子に変換することができるのです。これをミューオン核変換と呼びます。この反応を利用して、原子炉使用済み燃料中に含まれる超長寿放射性物質を短寿命または放射線を出さない安定核に変換することができ、使用済み燃料の処理問題を解決することができます。このミューオン核変換による核廃棄物処理の実現を目指して、基礎データ収集を目的とした実験が理研・東大を中心とする実験グループにより行われました。実際にミューオンによる核変換反応を起こし、どのような反応が起こるかが調べられました。


2015年

11月:MuSIC-M1初の共同利用実験E411で隕石の非破壊元素分析に成功

MuSIC-M1ビームラインでの初の共同利用実験であるE411実験(実験責任者:阪大宇宙地球学科,寺田健太郎先生)が実施されました。はやぶさ2プロジェクトでは、持ち帰る地球外試料をどの分析にも先駆けて、最初にミューオンにより非破壊非接触元素分析を行うことが検討されています。この実験は、負電荷ミューオンを使った元素分析のデモンストレーションと、ミューオンによる試料損傷の影響を調べるものです。実験によりJbiletWinselwan 隕石に含まれる炭素などの軽元素が明確に観測されました。


6月:MuSIC-M1で表面ミューオンビームの生成に成功

MuSICにより表面ミューオンビームを生成することに成功しました。国内唯一の定常ミューオンビームラインであるRCNP-MuSICにおいて表面ミューオンビームが供給されることにより、物性分野の基礎研究や産業応用のための利用が期待される超高時間分解能ミューオンスピン回転測定への道が開けました。
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2月:MuSIC-M1で初のミューオンX線測定に成功

負電荷ミューオンを銅板に停止させた際に発生する特性X線(ミューオンX線)をゲルマニウム検出器により測定しました。MuSICのDCミューオンを使うことで、ミューオンX線・ガンマ線を使った高精度の実験が可能となります。

2014年

12月:MuSIC-M1で崩壊ミューオン量の測定に成功

MuSIC-M1ビームライン出口で崩壊ミューオン量を測定しました。

7月:MuSIC-M1初のビーム試験実施

ミューオン生成装置MuSICで生成されたミューオンをMuSIC-M1ビームラインに導き、ビームライン出口でミューオンを観測することに成功しました。

3月:MuSIC-M1建設完了

MuSIC-M1を構成する偏光電磁石、四重極電磁石、DCセパレータ、真空機器や制御機器が完成し、これらの装置の立ち上げと調整を開始しました。

2013年

4月:新ミューオンビームラインMuSIC-M1建設開始

新型ミューオン生成装置MuSICの大強度ミューオンビームを基礎・応用科学実験に使用するために、新しいミューオンビームラインを設計し、その建設を開始しました。

2012年

大強度ビーム試験

第5回目のビーム試験では、大強度陽子ビームに向けた開発実験を行い、共同利用を開始する際の定常運転状態を模するデータを収集しました。

2011年

10月:周辺放射線量の測定

第4回目のビーム試験を実施。ミューオン量の詳細測定の他にMuSIC周辺の放射線量も測定されました。

6月:設計通りの高いミューオン生成効率を確認

第3回目のビーム試験では、ミューオンの寿命測定に加え、ミューオンX線による負電荷ミューオン量の測定も行いました。これらの測定により、陽子1個当たりに生成されるミューオンの個数が計算され、MuSICが設計通りのミューオン生成効率を持つことが実証されました。従来のミューオン施設に比べて1000倍以上のミューオン生成効率が達成されました。

2月:ミューオンビームの確認に成功

第2回目のビーム試験では、ミューオンの寿命を測定することで、生成された二次粒子に含まれるミューオンの同定に成功しました。

2010年

7月:全システム稼働、初の二次粒子生成に成功。

第1回目のビーム試験を実施しました。リングサイクロトロンにより加速された392MeVの陽子ビームをグラファイト標的に入射し、ソレノイド電磁石出口で生成された2次粒子を観測しました。

超伝導ソレノイドのコミッショニング

2009年

パイオン捕獲部とミューオン輸送部の建設