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 浜通り環境放射線研修

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2011年3月11日に起きた東日本大震災により、日本は未曾有の災害を経験しました。1000年に一度といわれる巨大な地震や津波は、それ自体が大きな被害をもたらしただけでなく、原子力発電所の事故という質の異なる災害を誘発し、防災やエネルギー問題を考え直す必要性を国民に突きつけました。震災から月日が流れ、良くも悪くも少しずつ人々の話題に上る機会が減っていますが、この問題は決して風化させてはならず、日本の将来を担う若者に受け継いでいかなくてはなりません。

東日本大震災が起きたのは今の大学生が小学校の低学年の頃のことです。にもかかわらず東日本大震災、とりわけ福島第一原子力発電所の事故に関心をもつ学生は少なくありません。しかし、具体的に当時どのような災害が起き、その後どのように復興の道をたどってきて、現在どのような状態にあるのかについて正確で網羅的な知識を得る機会はほとんどありません。マスコミやインターネットを通じて得られる情報は玉石混合で、時には科学的に認められた知識と大きく乖離した風評ともいえるものも含まれており、正確な情報を抽出することは容易ではありません。こうした問題に対して科学的に正しい知識や考え方を得る機会を提供するというのは大学の重要な使命のひとつだという考えから、私たちは浜通り環境放射線研修をはじめました。

この問題の難しさは、状況を多面的に見る必要があるという点にあります。放射能そのものを理解するためには物理的な理解が必要ですし、放射性物質が環境に存在し、循環していくのかを理解するためには化学や地球物理が必要です。それらが人体にどのような影響を与えるかは生物や医学の知識が不可欠です。しかし、自然科学的に理解できたとしても、その環境放射線に対して人間社会がどのような反応をするかを知るために自然科学は時に無力であり、社会科学的あるいは科学コミュニケーションに基づく分析が必要になります。大学はこうした多方面の専門家による総合的な教育を行うことのできる場です。浜通り環境放射線研修では、関係する様々な分野の専門家が時に大学の枠を超えて集い、原子力発電所の事故後の福島県を科学的かつ多角的に見ることができるような知識と思考力を身につけた学生を育成することを目指しています。

研修では各分野の専門家が最低限の知識を講義しますが、それ以上に自分の目で見て自分で感じて、自分で調べることを重視しています。そうして得た情報を総合し、自分の頭で考え、学生間の議論を通じて問題の本質を見極め、その解決方法を模索する力を養ってもらいたいと思っております。教員や学生の多様性も重視し、分野や学年、国籍などの制限は一切設けないことで、多様な背景を持った学生がそれぞれの背景に根ざした考え方をぶつあいけ、新しい考え方に目覚めていく過程を体感してもらいます。

我々の身の回りを見回してみると、実は類似した複雑な問題に満ちあふれていることに気づきます。学生たちが自分たちのの将来、ひいては日本や世界の将来を築いていくときに、ここで学んだ力が生かされることを願っています。

〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘10-1

©2015 Research Center for Nuclear Physics, Osaka University