素粒子・原子核分野では、単位系は自然単位系という単位系を用いる。
FFAG加速器:この加速器は、Fixed-Field Alternating Gradient accelerator(FFAG)の略で、1950年初頭に開発された円形加速器の一つ。磁場が変化しない(fixed-field, サイクロトロンと同様)のと、強収束性を持つ(シンクロトロンと同様)のが特徴で、固定磁場強収束加速器とも呼ばれることがあるらしい。
用途としては、癌の陽子線治療における陽子線源としての医療分野への応用や高強度中性子線源として、またミューオンが崩壊する前に高エネルギー領域へと加速する「エネルギー増幅器」やFFAGにより発生した中性子線を用いて臨界状態(核分裂などの連鎖反応が一定の割合で継続している状態)に達してない核分裂炉を駆動するための加速器駆動未臨界炉への応用など。
ディスパージョンとは、エネルギー(または運動量)の違いによる、各点sでの変位x(s)の違いのこと。
単位は、長さの単位で、運動量の相対変化量が1の時の変位量で表す。要は、8GeVだったら16GeVになるか0GeVになった場合の変位量。
Spring-8蓄積リングの場合、最大のディスパージョンを与える場所でのディスパージョンが40cm程度。エネルギーが0.1%(=0.001)変化したとすると、その場所での軌道が40cm×0.001=0.4mm変化するということ。
運動量(エネルギー)変化に伴う位置の変化の係数がディスパージョンなので、運動量(エネルギー)を変化させて、軌道を測定すれば良い。運動量は、RF加速周波数を変化させることにより運動量を変える。
今日のミーティング(20190704)の話では、グランドライデンのディスパージョンを上げると、resolutionが2倍に上がるらしい。
プロトンとspallaton targetによるspallation reactionにより、パイオンが放出される。このパイオンがdecayすることにより、ニュートリノを放出する。
GAGG:これの正式名称は、Gd3Al2Ga3O12(ガドリニウム・アルミニウム・ガリウム・ガーネット)であり、シンチレータ結晶である。
特徴として、発光量が大きく自己放射性がない・密度が高く小さな結晶でも感度が良い・潮解性もなく空気中の水分による劣化の心配もない
CsIシンチレータ結晶:質量密度が大きく原子番号も大きいので、γ線の阻止能が高い物質である。添加する材料によりPure CsI、CsI(l)、CsI(Na)の3種類に分けられる。
Pure CsIは、最大発光波長が他の添加されたCsIと比べると短波長の315nmである。315nmの減衰時間は16nsと短いので、高速度評価などに使用できる。
CsI(Tl)は、かなり明るいシンチレータ結晶の一つ。最大発光波長が550nmなので、フォトダイオードの読み出しに適している。また僅かに吸湿性があり機械的にも丈夫な特性があり、放射線耐性が比較的良好。
CsI(Na)は、最大発光波長が420nmで、NaI(Tl)の85%の光出力が得られる。
実験では、ビームを標的に当てて出てくる粒子を様々な測定器で検出し電気信号に変換して記録する。ここでトリガーとは、見たい事象が起こったことをいち早く判断し、検出器からの電気信号を読み出す命令を出す役目がある。
トリガーの作り方:図(参照:https://www2.kek.jp/ja/newskek/2004/mayjun/trigger.html)のように標的にビームを照射し、前方45度に出てくる粒子を調べる実験を考える。ビームが通過したことを確認するための測定器S1と標的から出てきた粒子を捕える測定器S2を置いた。あとは、粒子が通ったタイミングでトリガー信号を出し、それを使ってS1とS2のデータを記録すれば良いことになる。S1とS2の検出器の信号がほぼ同時に、ある値以上になる条件で信号が出る論理回路を作れば、トリガーとなる。
ただし、自らの信号を用いて判断していてはトリガーが出た時には信号は無くなってしまう。このため、測定器からの信号を二つに分け、片方の信号を遅らせておきトリガーが出るまで待たせる必要になる。図のような実験では、信号のケーブルを10m長く通すことで、50nsの時間が稼げる。これだけあれば、S1とS2の両方が反応したという論理判断には十分である。
・放射線と放射能の違い:放射線は、α線、β線、γ線、中性子線などの総称であり、放射能は、各々の放射線を出す能力のことを指し、単位はBq(ベクレル)で表される。
線量と線量率の違い:線量は、物質に吸収される放射線の量で、人体の場合の単位はSv(シーベルト)で表される。線量率は、その場所の現在の放射線レベルを表し、単位はSv/h(シーベルト/時)である。
それぞれの放射線を1台のサーベイメータで測定できるか?:
・電離箱式サーベイメータ:これは、ベークライト(絶縁性の樹脂)やプラスチックからできた円筒形の容器に、空気やアルゴンガスが入っていて中心電極と壁材の間に電圧を加えておいて、電離箱内に電場を作る。
内部にγ(X)線が入射すると、空気が陽イオンと陰イオンに電離する。電離したイオンは電極に集まり電極間に微小な電位差が生じて電流が発生する。この微小な電流をアンプで増幅させて電流表示する測定器。
このサーベイメータは、30keV以上のフォトンエネルギーに対してエネルギー特性が良く、精度の良い測定ができる。
・GM管式サーベイメータ:GM計数管は、円筒形の内部にヘリウムorアルゴンなどの不活性ガスが詰められていて、中心電極と壁材との間に700~1000VのDC電圧が加えられている。γ(X)線は、壁材と反応して内部に電子を放出し、この電子が内部のガスに電離を引き起こす。
この電離によって生じたイオンがきっかけで内部で放電が起こり、放電によるパルスを測定することで測定ができる。起こった放電を早く消滅させないために内部のガスにハロゲンガスor有機ガスを添加する。
GMサーベイメータは、約0.1μSv/hの線量当量率から測定できるので感度が高く、応答も速い。一回の放電からそれが消滅し、次の放電が起こるまで約100μsのデットタイムがある。また、電場が回復するには更なる時間(回復時間)が必要。
・シンチレーション式サーベイメータ:この測定原理は、放射線が内部に入射すると、シンチレータは微小な光を発光し、この光をPMTで電流に変換、さらに増幅し、得られるパルス電流を計数することで放射線を測定する。
主として、γ(X)線用では、NaI(Tl)シンチレータ、CsI(Tl)シンチレータなどが用いられ、β線用で、プラスチック、α線ではZnS(Ag)のシンチレータが使用される。γ(X)線の感度は、GM管式や電離箱式より優れているので、微小な放射線測定に有効。
・中性子サーベイメータ:検出器には、BF3ガスや3Heガスを封入した比例計数管が主流で、中性子は電荷を持たないので原子核との核反応を起こし、出てきた荷電粒子を検出する方法をとる。
中性子のエネルギー領域は、熱中性子(0.025eV)~高速中性子(10MeV)までの広範囲であるので、検出器の材質や形状を工夫し、直接的に線量当量率の単位で表示できるようになっている。
・GM管式サーベイメータ(表面汚染検査用):β線による表面汚染の検査には、大きな窓(検出面が大きい)GM計数管を使用したサーベイメータが用いられる。β線を測定するときは窓は薄くないといけない。なぜなら、β線は飛程が短いため厚いと止まってしまう。
・シンチレーション式サーベイメータ(表面汚染検査用):α線による表面汚染の検査には、大きな窓(大面積)のシンチレーション検出器を使用したサーベイメータが用いられる。
自由電子が電場によって加速され、ガス分子と衝突し、結果的に追加の電子を放出するガスイオン化プロセスのこと。なだれ現象によりガスの電気伝導を上げることができる。放電には自由電子源と重要な電場が必要である。これは、自由電荷の数の現象もしくは電場が弱くなれば終わる。2つのプレート電極間の電離放射線にさらされるガス中のアバランシェ効果。
この項目は物理ではないが、データ解析をしているとよく出てくるので、忘れないようにここに書いておく。
※誤差の種類
・系統誤差:データ収集の方法が不適切(測定装置のバグや測定者の癖など)であるため、系統的にある一定の方向性を持つ誤差→誤差の原因を取り除くことで、完全になくすことができる。
・偶然誤差:理想的な状況でも偶然に起こってしまう誤差→確率的に発生するため、完全には取り除けない。ただし、統計的処理により減らすことは可能!
十分な回数測定を行った場合、誤差の分布は「正規分布」と呼ばれる分布で近似することができる。正規分布は、f(x) = 1/√2πσ^2 × exp(-(x-μ)^2/2σ^2)で表される関数で、σが標準偏差と呼ばれるものである。
例えば、誤差は±σとなる確率は、0.682(=68%)となる。
【最確値と誤差】
※最確値
我々は、測定から正確な値(=真値)を測定することは不可能であるため、その代わりに最確値を用いる。最確値や最確値に対する誤差を求める際には、複数回測定しその結果から求める。
例えば、n個の測定値x1,x2,...xnのデータの最確値Xは、
\[ \overline{X} = \frac{1}{n} (x_1+x_2+\cdots+x_n) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n x_i \] (測定値の平均が最確値である)
最確値は、ある標本における平均から出せる標本平均と呼ばれることもある。
※最確値に対する誤差(標準誤差)
最確値に対する誤差には標準偏差を使用するが、そのまま標準偏差を誤差として使用するのには問題がある!標準偏差とは、無限回測定した場合の標準偏差σに適応されるが、無限回測定は不可能なので、測定の誤差には標準偏差をそのまま適用できない。(標準偏差σは、全体のデータの標準偏差であって、通常は全体から一部だけデータを取り出して計算するので、標準偏差の公式はそのまま使用できない。)
普通の分散(母分散)σ2を求める公式は、
\[ \sigma^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n (x_i - \overline{X})^2 \]であり、分母のnを(n-1)に変えたもの、
\[ s^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^n (x_i - \overline{X})^2 \]を不偏分散と呼ぶ。不偏分散は、全体のデータからいくつか適当に抜き出して、抜き出したデータの中から全体のデータの分散を推定した値を表す。(全体のデータに対する分散が母分散、一部のデータを抜き出して母分散を予測したものが不偏分散である。)
また、n回の測定から得られた最確値(標本平均)Xに対する不偏分散s2mは、
\[ s^2_m = \frac{s^2}{n} = \frac{1}{n(n-1)}\sum_{i=1}^n (x_i - \overline{X})^2\]
⇒不偏分散の平方根は、(標本平均の標準偏差)=(標準誤差SE)となる
つまり、ある実験結果を誤差付きで表す場合、最確値をX、標準誤差をsmとすると、
\[ \overline{X} \pm s_m\]と表し、この時のsmは、
\[ s_m = \sqrt{\frac{1}{n(n-1)}\sum_{i=1}^n (x_i - \overline{X})^2} \]
で計算できる。
【誤差伝播】
ある測定値wが、複数の独立した測定結果x,y(それぞれの誤差をdx,dyとする)から求められる場合、w=f(x,y)とした時のその誤差の2乗d2w(=分散)は、全微分の関係から、
\[ d^2_w = \left(\frac{\partial f}{\partial x}\right)^2 d^2_x + \left(\frac{\partial f}{\partial y}\right)^2 d^2_y \]
で計算でき、その誤差dwは、
\[ d_w = \sqrt{\left(\frac{\partial f}{\partial x}\right)^2 d^2_x + \left(\frac{\partial f}{\partial y}\right)^2 d^2_y} \]
で計算できる。3変数以上も同じように計算が可能。
超重要!!!【誤差伝播の四則演算】
測定結果wが、x,y(それぞれの誤差をdx,dy)の結果から計算できるとし、x,yは互いに相関がないとする。この場合、測定結果wの誤差dwは、
1. w = x + y (足し算)
\[ d_w = \sqrt{(d_x)^2 + (d_y)^2} \]
2. w = x - y (引き算)
\[ d_w = \sqrt{(d_x)^2 + (d_y)^2} \]
3. w = x * y (掛け算)
\[ d_w = \sqrt{y(d_x)^2 + x(d_y)^2} = \sqrt{(yd_x)^2 + (xd_y)^2}\]
4. w = x / y (割り算)
\[ d_w = \sqrt{\left(\frac{1}{y}\right)^2(d_x)^2 + \left(\frac{x}{y^2}\right)^2(d_y)^2} = \sqrt{\left(\frac{d_x}{y}\right)^2 + \left(\frac{xd_y}{y^2}\right)^2} \]
割り算に関して、より分かりやすく書くならば、
\[ d_w = \frac{x}{y} \times \sqrt{\left(\frac{1}{x}\right)^2(d_x)^2 + \left(\frac{1}{y}\right)^2(d_y)^2} = \frac{x}{y} \times \sqrt{\left(\frac{d_x}{x}\right)^2 + \left(\frac{d_y}{y}\right)^2} \]
とも書ける。
Ex.)
Q. 身長h(その誤差dh), 体重w(その誤差dw)の場合、そのBMI(=b=w/h*h)の誤差dbは??
A. \[ db = \sqrt{\left(\frac{\partial b}{\partial w}\right)^2(dw)^2 + \left(\frac{\partial b}{\partial h}\right)^2(dh)^2} =
\sqrt{\left(\frac{1}{h^2}\right)^2(dw)^2 + \left(-2\frac{w}{h^3}\right)^2(dh)^2}\,\,\, \left(\because \frac{\partial b}{\partial w} = \frac{1}{h^2}, \frac{\partial b}{\partial h} = -2\frac{m}{h^3}\right) \]
で計算できる。