
李 誉成
理学研究科物理学専攻
理学研究科物理学専攻
現代物理学の根幹をなす量子力学と一般相対論は、ブラックホールのような極限的な場合で理論の整合性が悪くなります。この謎を解く鍵である「AdS/CFT対応」が、AdS時空での量子重力理論は実は境界上の重力を含まない場の量子論と等価関係を持つ、と示唆しています。特に、笠-高柳公式から始まる最近二十年間の研究により、境界上の量子論の量子情報・量子計算的側面が量子重力理論の幾何学的性質と強く関連することがわかりました。
その中で最も注目されている分野の一つは、量子複雑性を使ってブラックホールの幾何学的性質を解析することです。ブラックホールが形成された後に、内部の体積が長い時間に渡って増え続けることが知られています。 一方、量子論の中に同じような性質を持つ物理量は量子複雑性に他ならないため、 前述の AdS/CFT 対応の視点から見れば、 ブラックホールの内部体積と量子複雑性の間に対応関係が存在するはずだと予想されます。
しかし、量子複雑性の定義は複数存在するため、どの定義が内部体積と対応すべきかはまだ知られていません。私の研究は、異なる定義の量子複雑性を定量的に解析してブラックホールの性質と比較することです。これを通じて、複雑性の異なる定義の間の関係をより明らかにすることもできるかもしれません。