柿木 大樹

柿木 大樹
医学系研究科保健学専攻

私はSulfoquinovosyl acyl propanediol(SQAP)がもつ、放射線治療の治療効果を増強する可能性について研究を行っています。

SQAPは放射線に対する感受性を高める“放射線増感剤”です。SQAPを主成分とする薬剤であるレブリチンは農林水産省によって2023年9月15日から動物用医薬品製造販売承認され、イヌのステージIII・IVの鼻腔内腺癌に対して臨床利用されています。SQAPは腫瘍内の血流を改善し、腫瘍内酸素濃度を一時的に増加させ、放射線による傷害を酸素効果によって増強することが先行研究で明らかになっています。

一方で、放射線感受性の増強以外にSQAPが持つ作用についても徐々に解明されてきています。がんは再増殖や転移を目的として、血管壁などを分解・侵入します。この過程を浸潤といいますが、私が行ってきた研究により、SQAPは単独でがん細胞の浸潤を抑制し、さらには放射線を併用することでより強く浸潤を抑制することが判明しました。このことから、放射線治療時のSQAPの併用による転移リスク軽減の観点からも放射線治療後の患者の予後を改善する可能性が考えられます。

PQBAに所属して様々な分野についての知識を深め、これまで以上に多角的な視点から新たなSQAPの将来性を解明できるように励んでいきます。

活動・成果