
下條 暖人
理学研究科物理学専攻
理学研究科物理学専攻
私は現在、原子核実験研究室に所属していて、特に原子核内のクラスターの性質に興味を持っています。原子核は、陽子と中性子からなりますが、通常の原子核では、陽子と中性子が、コンパクトに集合していて、原子核全体をひとつの液滴とみなすことが有効です。一方で、一部の陽子と中性子が局所的に強く結合し、クラスターを形成することがあります。
原子核におけるクラスターの最も顕著な例は、α凝縮状態です。α凝縮状態は、原子核が、複数個のα粒子によって構成され、さらにすべてのα粒子が最低軌道を占めている特別な状態です。α凝縮状態は安定的には存在しませんが、12Cの第2励起状態は、3α凝縮状態であることが知られています。わたしたちのからだを構成する炭素の多くは、この状態を経由して生成されたと考えられています。また、α凝縮状態は、原子核分野の究極的な目標のひとつである、核物質状態方程式の低密度側に重要な情報をもたらすことが期待されています。そのためには、2α,3α,4α,5α,...とさまざまなα凝縮状態が存在しなければなりませんが、4α以降の凝縮状態は、いまだ発見されていないのが現状です。
私は、20Neにおいて、原子核がα粒子5つで構成された5α凝縮状態を発見したいと考えています。様々な実験上の困難を克服するため、検出器の開発や標的冷却システムの開発などを行っています。