大庭 歌綸

大庭 歌綸
医学系研究科・医学専攻

私は超高線量率(ultra-High Dose Rate: uHDR)照射が、がん細胞の浸潤能へ与える影響について研究しています。uHDR照射とは、通常の臨床現場で使用されているよりも非常に高い線量率(単位時間あたりに照射する放射線量)(100 Gy/s以上)を用いて、短時間に照射を行う最新の照射方法です。この照射方法は人体の正常組織における有害事象を減らし、がんを局所的に制御できる効果が報告されています。

uHDR照射の研究はX線や陽子線、電子線で多く行われていますが、私は炭素イオン線(重粒子線)を用いています。炭素イオン線を用いたuHDR照射は世界でも数少ない機関でしか行うことができない画期的な照射方法です。

私達の研究グループでは、従来の線量率(1.16 Gy/s)の炭素イオン線をがん細胞に照射すると、がんの浸潤や転移が抑制されることを明らかにしましたが、uHDRの炭素イオン線ががん細胞の浸潤や転移へ与える影響は明らかではありません。そこで、従来線量率とuHDRの炭素イオン線を照射した場合の細胞浸潤能の比較研究を行っています。また、放射線生物学の多くは、「放射線による細胞死」がエンドポイントとなる研究が多いなか、この研究は照射後も生存している細胞に着目しています。

活動・成果