本多 祐也

本多 祐也
理学研究科物理学専攻

私は宇宙の元素合成過程に関わる原子核反応について研究を行っています。宇宙での元素合成は宇宙の始まりであるビッグバン直後から始まっており、陽子と中性子から重陽子やHeが生成されました。しかし、質量数A=5,8には安定な原子核が存在せず、Heで元素合成が停滞してしまうという問題がありました。この問題を解決したのが3つのα粒子(Heの原子核)から3α共鳴状態と呼ばれる12Cの励起状態を経由し、12Cを生成するトリプルアルファ(3α)反応です。3α共鳴状態の大部分は再び3つのα粒子へ戻ってしまいますが、極めて稀にγ崩壊により脱励起することで12Cが生成されます。したがって、γ崩壊確率が3α反応率、すなわち12Cの生成速度を決定します。

3α反応で主に経由する3α共鳴状態は12Cの0+2状態(ホイル状態)であり、そのγ崩壊確率はすでに測定されています。しかし、109 K以上の高温度環境下ではホイル状態よりも高い励起状態である3-1状態や2+2状態の影響が重要になることが示唆されています。ところが、これらの状態に期待されるγ崩壊確率は10-8–10-6と非常に小さく未だ測定されていません。そこで私は重陽子非弾性散乱を用いて12Cの3-1状態のγ崩壊確率を測定する研究を行っています。

活動・成果